第8話
それからのこと。
日本政府は、この日から間もなく、「もう一回つながろう、日本」というキャッチコピーで、被災した地域を援助していく大々的なプロモーション・プランを発表。計画には、「コネクション端末」が中心的な役割を担うことが盛り込まれた。つまり、被災者と、それ以外の人々とを物理的にカンダタでつなぎ合わせ、社会的なコミュニケーションの〝網〟を日本中に張り巡らせて、被災地の孤立を防ぐというわけである。一人ひとりの被災者を心理的にケアしつつ、被災地の現状を細やかに共有するとともに、日本中が復興需要を享受する――その結果、大きな経済効果をもたらすことも期待された。本計画の実行委員会のメンバーとしては、各界の有力者・研究者が大々的に集められたほか、コネクション端末第一人者として知られるモバイル・コンサルタント「羊谷ひろし氏」が名を連ねた。
UFOの件は、メディアの関心が本プロモーション・プランに移るにつれて全く報道されなくなり、いつしか皆の記憶から消えてしまった。ミニチュアダックスフンドの巨獣についても同様である。オカルトチックな衝撃は、日本中を巻き込んだ巨大地震と復興計画の渦に飲み込まれていき、一部の者が知るのみとなった。
そして、羊谷は今後、上記プロモーション・プランの実行を担う一人として、日本を大きく変えていく立役者となるのだが、そのことを彼はまだ知らない。今はまだ、童貞のままだ。
君の目には、世界がまるで違うように見えているのかも 佐々木缶 @sasakikan
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