猫王子は南大陸に降り立つ

自国よりも乾燥した空気を吸い込んでルイは南大陸の入り口、アデウス国に降り立った。護衛らしく自分の半歩の距離に従うレオに声をかける。


「この空気懐かしいなー前に来たのは2年前になるか」

「そうですね。前回は貴方がどこぞの国の姫君をたぶらかし、挙句に求婚を迫られ本国に慌てて逃げかえりましたから観光もろくに出来ませんでしたね」


懐かしいですね本当になどとうそぶく、なんでそんな余計なことを覚えているのか…折角記憶の彼方に追いやっていたものを……


「というか俺は誑かしてなんかな「ああ失礼しました、天然のタラシでしたね。」


穏和そうな顔なのにこの騎士はどうしてこうも口が悪いのか、口が悪いから天がこの顔にしたのだろうか


「自国で1、2を争う腕があってもその口じゃな…」

「ルイ様なにか不満でもおありで?昔から貴方様を守ってきた私にあんまりではないですか。ところで烏少年ノアはどこに行きましたか?」

「情報収集の為に先に降りて一仕事させてるんだが不都合でもあったか」

「あぁ、それでルイ様が大量の荷物をお持ちでしたか」


納得しました。てっきり筋力トレーニングの一環かと思いましたよ。


確かにノア分のカバンも自分のと一緒に持って運んでいるのはそういう訳だが、わかってて言っている気がする。というか手伝え。

そんな心の声が聞こえた訳ではないが、ルイのカバンのみ持ってくれる。


「なあレオ、もう少しノアを可愛がってやれないか?」

「その必要性がないですね。私は主である貴方の剣、そしてノアは貴方の目であり耳。役割が違いますし今一緒にいるからといって仲良くする理由にはならないですね。」

「せめて仲良くする努力をな」

「命令なら聞きますよ?」

「じゃあ少しだけ命令」

「承知致しました。少しだけ可愛がってあげますね。」


 爽やかな笑顔で襟足にかかる位の茶金の短髪、世間一般にはモテそうなこの優男。なのに自国一、二の剣の腕をもち、更に言うなら第一王子オレの乳兄弟兼近衛騎士。というこれでもかというくらい詰めに詰め込んで神が作った様な男それがこのレオルーナ・グレーファン、通称レオ。口が物凄く悪いという難点以外ほぼ完ぺきと言える。

 もう一人の旅の同行者はノア。髪も眼も夜空を溶かし込んだ様な黒色をしている。とある事情で俺の従者になり今回の旅に同行することになった。まだまだ好奇心旺盛な10歳の少年なので場を和ませることが今現在ノアの主な仕事となっている(本人は真面目に頑張っているのだがちょこちょこ動き回る様が大変和むのだ)。


 其々個性が強いがノアも加わり一層に騒がしい旅になりそうだと思う。



 まあ観光に来たのではないのだが。

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猫王子は災難をよぶ! 竜揮 @blackdoragon

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