猫王子は南へ向かう

 広く青い空を突き進む白く大きな船体。

 甲板を走り回る黒髪の少年を笑顔で眺めていたルイに少年が走り寄ってくる。


「なあルイ凄いなこの船!飛ぶより早いし綺麗だしこんなの初めてだ!」

「お前はそうだな、でもこれで驚いてたらこれから行く南大陸なんてどうするんだ?」


腰抜かすなよ?

と釘を刺しつつ走り回って乱れた髪を撫で付けて直してやるとすぐにまた甲板を走り出す。

 この黒髪の従者は国を出てからはしゃぎすぎて同じようなやりとりを何度も繰り返している。

 まあ生まれてて初めて国から出たから当然といえば当然だ、と考えていると少年の体が目の前で浮き上がった。


「ノアいい加減にしなさい、主も甘やかさないように。」

「話せレオルーナ!オレは何もしてない!」


ぶら下がった状態のノアが手足をばたつかせるが、騎士であり現在自分の唯一の護衛である長身の青年には小柄な少年が敵うはすがない。


「甘やかしてるつもりはないけどノアはかわいいからつい「かわいいとか言うな立派な大人に!!!」

「大人はそんなことで怒らないし、そう思われたいなら静かにしてなさい子供じゃないというなら。」


もうそろそろ港に着くので下船の準備をするように。それくらい大人ならすぐやれますよね?

 下ろされたノアは不服ながらも下船の準備をするために部屋に向かう。

 部屋で暴れてないといいのだが…


「今回はノアも加わって楽しい旅になりそうだなレオ?」

「毎度振り回されている私の身にもなっていただきたいですね王子?」


王子の世話だけでなく子守も追加なんて体が足りそうにないですよ。

 レオルーナがげっそりした顔で呟いてノアの後を追うように中へと入っていく

 自分もそれに続こうとしたと同時に風が頬を撫で立ち止まる。

南大陸は目の前に迫っている。旅の楽しみとを叶える為に王子は一歩を踏み出した。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る