五秒クイズの挑戦編


 ―前回までのあらすじ―

 一問五秒で答えなくてはいけない、スピードクイズを挑まれた。

 十問中七問正解しなければ、サメのいる池にドボン。

 がんばろう。

 ―あらすじ、ここまで―


 

〈それでは、問題だぎゃ!〉


 ババンッ!


〈50人の戦士が集まり、トーナメントで戦った。

 最後のひとりが決まるのは、何試合目だぎゃ?

 引きわけ再試合や三位決定戦などはないものとするぎゃ。

 ゴォ、ヨン……〉


 オレは言った。


「49試合目だ」

「そうなの?」

「トーナメントは、一試合でひとり消えていく。

 集まってるのが50人なら、49試合やれば最後のひとりが決定する」

〈正解だぎゃ……〉


 番人は、悔しそうな声をだす。


〈次だぎゃ!

 788×28の答えで、正しいのは?

 1、284 2、22064 3、25594〉


「ちょっと待って! こんな難しい問題、暗算で解けるわけないじゃない!」

「ローラが言う通りだぜなー! 問題として成立していないぜなー!」

「解けなくはないが、五秒程度では……」

「ええっと……」


 ローラやリンディスが叫ぶ中、ロロナとフェミルは計算していた。

 カウントが流れる。


〈ゴォ、ヨン、サン、ニィ……〉


 オレは言った。


「正解は二番だ」

〈正解だぎゃ……〉

「なんでわかるの?!」

「800×30の答えが、24000だったからな。

 一番は明らかにケタが足りないし、三番だと逆にオーバーしてる。

 消去法で二番しかない」

「正解を導くのではなく、間違いを炙り出したわけか……。さすがはケーマ殿。着眼がすばらしいな」

「さすがです……」

〈次! これは遠い昔に、異世界からやってきた時空放浪者が伝えたというクイズだぎゃ!〉

「異世界から……ねぇ」


〈問題!

 以下の文字列を見て、隠された暗号を答えなさい!

 答えは、とても簡単です!


 こたたたのたたた、もたたじ、たたた。

 たたたれたたたつ、たたたはたたた

 だたた、みーたた。ですたたた〉


 その文字列の右下には、タヌキのイラストがあった。

 ロロナがいぶかしむ。


「その右下に描かれた、珍妙な動物はなんだ……?」

〈これの名前は、『タヌキ』だぎゃ!〉

「不自然に多いタの発音に、タヌキという名前の動物……? つまりタを抜いていけば……」

〈ゴォ、ヨン、サン、ニィ……〉

「五秒では足りんっ!!」

「答えは、とても簡単じゃないか?」

「しかし五秒という時間ではっ!」

「そうじゃない。『とても簡単』が答えだって言う話」

「?????」

「問題文の二行目に、『答えは、とても簡単です』ってあるだろ?

 これをわざわざ入れてるっていうことは、『とても簡単』が答えなんだよ。

 それが答えだって書いてるんだから」

〈正解だぎゃ……〉

「タヌキなどが表れているから、暗号文からタを抜いて読むものだと思っていたのに……!」

「それは引っかけだと思うよ。暗号文は、読んでないけどダミーじゃないか?」

「どうして断言できたのだ……?」

「五秒で読むのは難しいから。

 さっきの計算もそうだけど、五秒クイズっていうことは、五秒以内に解けるやつじゃないと」


 逆に時間制限がなかったら、タの文章も読んでいた。

 そんな感じで、オレはクイズに答えて言った。


〈問題! 今は何問目だぎゃ?!〉


 というお約束にも、「六問目だ」と即答する。


「なんでそんなの数えてるのぉ?!」

「この手のクイズの王道だからな」


 そして七問目。


〈問題!

 680年前の神魔大戦の英雄天使、求道者マーモンが作った国の名前は?!〉

「これはサービス問題っていう気がするわ!

 アタシはわかんないけど!」


 ローラが叫び、ロロナやフェミルもうなずいた。

 オレが答えるものとして、オレのほうを見る。


〈ゴォ、ヨン、サン……〉

「歴史はまったくわからんぞ?!」

「「「えええーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」


 三人の声が響き渡った。


〈ゼロ!〉


 パチン!

 シャボン玉が弾け、オレたちは落下する。

 少しの時間で戻ったものの、けっこうな距離落とされた。


「ケーマ殿に頼りすぎたか……!」

「次に歴史問題がでたら、わたしのほうで答えます!」


 ロロナが歯噛みし、フェミルが叫ぶ。

 そして番人は――邪悪な笑みを、ニヤリと浮かべた。

 フェミルでも難しい歴史問題を出され、八問目も落としてしまう。


「時間があったら、アタシの力で解けるのにぃ……!」


 過去の記憶が貯蔵されているという知識の泉――要するに古い図書館――にアクセスできるローラの力も、五秒では役に立たない。


〈それでは――落下のかかった第九問!〉


 緊張が走る。


〈問題数は残り二問!

 でもおみゃーらは、すでに二回間違えている!

 次も間違えてしまうと、人食いサメがいる底にドッボーン!

 けどおみゃーらの才能は惜しいから、ここでギブアップするか選んでいいぎゃ!

 賢いほうを選ぶんだぎゃー!〉


「死を覚悟で問題に挑むか、ここで安全に降りることかの二択か……」

「アタシはギブアップがいいと思うわ! 試練だったら、来年またチャレンジすればいいじゃない!」

「確かにここまで危ないと、問題に行けとは言いにくいぜなー……」

「ほらほらほら! リンディスちゃんもそう言ってるじゃない! どう考えても、ギブアップが賢いわよっ?!

 番人の人も、賢いほうを選べって言ってるもん!」

「そうだなぁ……」


 オレはしばし考え言った。


「答えはNO!

 先に進む道を選ぶぜ!」

「ふええっ?! 勝算はあるのおぉ?!」


 オレはわざとらしいほどに遠くを見て答える。


「声が――聞こえたんだ。

 この世界でもっとも賢く美しい女神が、『あなたはここで死ぬ定めではない』と言う声が――」


 するとローラは言い放った。


「アタシそんなこと言ってないっ!!!」


「お前じゃねぇぇーーーーー!!!」


 つーかこのタイミングで、それを言えるのはすごいな!


〈どうなんだぎゃー?

 ギブアップはせず、問題に進む――でいいんだぎゃー?〉

「そうしてくれ」


 オレが言うと、番人はニヤ――と笑った。

 シャボン玉が割れる。


「どういうことおぉ?! 問題はこれからでしょ?!」

〈違うだぎゃー! 今のが『第九問――賢い選択を選べ』だぎゃー!

 連続で間違えておいて続行なんて、賢い選択だとは言えないんだぎゃー!〉


「引っかけだったのねぇ!

 鬼ぃ! 悪魔っ! 悪魔ぁ!

 ケーマの次に悪魔ーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 オレたちは落下していった。

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食べるだけでレベルアップ!~駄女神といっしょに異世界無双~ kt60 @kt60

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