第四階層の試練に挑もう
―前回までのあらすじ―
本のことなら何でも知っているという女神メーティスに、
「本についてのクイズ対決」を挑まれた。
メーティスは、本の女神。
「本を読んで確認できること」なら、どんな問題でも答えてしまう。
そこでオレは、ドスケベノンストップというエロ小説の音読を要求した。
メーティスは読み切ることができず、「何でもしますからぁ……」とギブアップ宣言した。
―あらすじ、ここまで―
「なんでもします……か」
オレはメーティスのギブアップ宣言を反芻し、厳かに言った。
「それならドスケベ・テンペスト~巨乳を揉む手はラビリンス~のクライマックス1600文字を音読してもらおうか」
「ふええっ?!」
「ドスケベノンストップを勘弁してやる代わりに、ドスケベテンペストを読めっていうお話さぁ!」
「ええっと…………ひいいっ!」
ボンッ!!
メーティスの顔が真っ赤になった。
「ノノノノ、ノンストップよりもひどいじゃないですかぁ!」
「テンペストだからな。当然だろう」
「た、た、たかしは、まるであいさつのように自然な仕草で、彼女の、ちちちち、ちくっ、び…………」
「どうしたぁ! 声が小さいぞぉ! ノンストップは読めない、テンペストもダメ。だったらお前は、いったい何なら読めるんだあぁ?!」
「ひいぃん……」
「いい加減にしなさーい!」
ローラがオレの後頭部を、ハリセンで叩いた。
「メーティスちゃん、本気で泣き出す二秒前じゃない!
殺した上にオーバーキルって状態になってるわ!」
「確かにやり過ぎたか。
ま、普通に通させてはもらうぜ?」
「どうぞ……」
メーティスは、床に手を当てた。
グオゴゴゴ。本棚が割れて、隠し通路への道がでてくる。
ロロナが言った。
「しかし素朴な疑問なのだが……。この試練、正攻法だとどうやって勝つのだ?」
「わたしもわかりません……」
「なに……?」
「この試練は……。『負け』を前提に作られております……。
事前に用意された『鋭い解答』や『深い見識』に該当するか匹敵する問題を出すことができれば、『合格』となります……」
「そうだったのか」
「あとは……。その……」
「その?」
「試練とは関係なしに、本好きのお友達ができたら…………と」
メーティスは、カアァ――と耳まで赤くした。
かわいい。
ロロナとフェミルが言った。
「そういうことなら、色々と紹介してもらいたいな。実は最近、ある演劇に感動してな。
原作本も見てみたいと思っていたのだ」
「わたしもわたしも、本は好きです!
グルメの本とか石〈グルメ〉の本とか、魔導書とか歴史書とかも好きです!」
(………(*´ワ`*)。)
幼女のマリンも、読んでもらった本を掲げる。
「グルメの三文字につけてはいけない文字列が入った気はしましたが……。
うれしい……です」
「ちょっと待って! 今は試練が優先よ!」
「そっ、そうか。そうだったな。
すまない、メーティス。先に進む必要がありそうだ」
「はい…………」
「帰りには、必ず寄らせてもらう」
「はい!」
暗くなりかけたメーティスは、すぐさま明るい笑顔になった。
よかったよかった。
◆
オレたちは進む。
丸にコウモリの羽が生えたような、ファンタジーの使い魔みたいなやつが出てきた。
〈ようこそだぎゃー。オイラは……〉
「ファイアッ!」
ゴウッ!
オレは使い魔? を燃やした。
「ちょっとケーマ! なんでいきなり攻撃してるの?!」
「そこはかとなく、悪意を持っている感じがしないこともなかったので」
「そんな理由で相手を燃やすの?!」
「こんな場所にでてくる時点で、まともなやつじゃなさそうだからなぁ。
まぁ一応、死なない程度には加減した」
「合理的にバイオレンスね!」
〈むしろただのバイオレンスだぎゃ……〉
「それでお前はなんなんだ?」
〈オイラは、第四階層の番人にして万魔殿の守護者だぎゃー。
おみゃーらには、第四階層の試練を受けてもらうんだぎゃー〉
「どんな試練だ?」
〈こんなだぎゃ〉
第四試練の門番は、天井からぶら下がってたヒモを引っ張る。
〈第四階層の試練――『プチ万魔殿から脱出しろ!』の開始だぎゃー!〉
ガコンッ。
地面に穴があいた。
「ふええっ?!」
ローラがひとり落下していく。
ローラ以外の全員は、普通に穴を見つめてる。
「ローラ殿おぉ!」
「大丈夫ぜなー?!」
「おぉーい」
穴に向かって声をだすオレたちに、四階層目の守護者が言った。
〈お前らどうして、落ちていないぎゃ?!〉
「わたしは足元に違和感を感じたので、普通に動いた」
「オレも足元が変な感じだったから、フェミルとマリンを連れて動いた」
「足元が空洞になっていたら、なんとなくわかると思うぜなー!」
「それに気づかず落ちるとは、女神ローラは面汚しよ……」
「のんきなこと言ってないで助けてえぇ! ふえぇんっ! 腕が、腕がげんかいぃ!」
見るとローラは、壁の端に捕まっていた。
「この試練って、お前が出した落とし穴トラップで落とされた先に『プチ万魔殿』とやらがあって、クリアしたらここに戻るとかそんな感じだよな?」
〈その通りだぎゃ……〉
「そのトラップに引っかからなかったんだから、エクストラクリアみたいな感じでクリアにならんか?」
〈なるわけないぎゃー!〉
仕方ない。
「トラップと言うにはクソみたいな落とし穴だったが、引っかかったことにしてやるか」
「バカバカしいと言えばバカバカしいが、そういうシステムな以上は仕方ないな」
〈始まる前にこんなにボロクソ言われたのは、初めてだぎゃ……〉
オレたちは、仕方なく落下してやった。
壁に捕まるローラを抱きとめる。
「落ちた先にあるのが、第四階層の試練だってよ」
「理由はすっごくわかったけど、大丈夫なのぉ?!
アタシたち落ちてるけどぉ?!」
「このままだったら試練にならんし、なにかあるだろ」
その時だった。
オレたちは、魔力のこもったシャボン玉に包まれる。
番人の姿が現れた。CGっぽい感じで透けている。
〈フハハハハ、落ちゆく気分はどうだったぎゃ?! 愚かなる冒険者しょく――――〉
「ああ?」
「……」
「ぜなぁ?」
〈お……落ちる気分はいかがでしたか? わたくしに合わせてくださった、親切な冒険者の方々……〉
「それでいい」
〈最初の試練ですが……。『五秒クイズ』に答えていただきます……〉
番人が映っていた画面の横に、文字列が表示された。
声もでる。
〈ギャギャンッ!
鉄100キロと綿100キロ。軽いのはどっち?
ゴォ、ヨン、サン……〉
ローラが答えた。
「軽いほうなら……綿!」
「あ、バカッ」
オレは言うがもう遅い。
〈ハズレだぎゃ!〉
の声と共に、オレたちのシャボン玉が弾けた。
「ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!!」
オレたちは落ちる。
二秒ほどでシャボン玉が復活し、落ちるのは止まった。
オレは言う。
「鉄100キロと綿100キロなら、どっちも100キロ。重さは同じだ」
〈その通りだぎゃ!
十問中、八問正解すれば、『試練への挑戦権』が獲得できるぎゃ!
逆に、三回間違えると……〉
下が明るくなってきた。水が映し出される。
サメの背びれらしきものが、複数うごめいていた。
〈人食いサメがいる底に、ドッボーンだぎゃ!〉
「さっきローラが間違えた分は?」
〈それは当然、間違いにカウント…………〉
「…………(ギロリ)」
〈されません…………ぎゃ〉
「よろしい。それでは問題を出せ」
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