概要
アルテンシャインの社交界で《毒の宝石》と呼ばれる美貌の貴公子、ヴァレンティン。棘のある言葉で誰彼構わず切り捨てるその態度は、誰にも本当の自分を見せないための鎧だった。
そんな彼にただ一人、心を許す相手がいる。十年前、雨の路地で拾った専属護剣士――ジークフリート。岩のように寡黙で、どんな挑発にも「御意」としか答えないこの男だけが、ヴァレンティンにとって唯一、檻の外の存在だった。
だが、その沈黙の下に何が隠されているのか、ヴァレンティンは知らない。孤児として拾われ、恩義と分不相応な想いの狭間で、己の心に「忠誠」というラベルを貼り続けてきたジークフリートの十年を。
触れれば壊れる。言葉にすれば終わる。そう信じて守ってきた沈黙の均衡が、ある夜、静かに軋み始める――。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!『毒』と『沈黙』に隠された愛のカタチに酔い痴れる耽美BL
息を飲むほど美しく、孤高に育っていくヴァレンティン。
自らを削って毒と棘を纏うに至った彼の過去と孤独には、胸を締め付けられるような痛みを覚えます。
そんな彼にただ一人、影として従う専属護剣士ジークフリート。
沈黙を貫く彼の心の内にただひたすら揺るぎない愛を感じます。
主従ではありますが、唯一人の人間として扱い合う二人。
尊い事この上ない。
筆者様は言葉の重みと沈黙の表現が秀逸で、読者を鉄と血の匂い立つ汚泥へと突き落としたかと思えば、今度は豪奢な夜会を包む濃厚な芳香で満たしてくる。どこまでも耽美で濃密な文章が、五感に訴えかけてきます。
硬く鋭く、研ぎ澄まされているのに歪で美しく、燃えた…続きを読む - ★★★ Excellent!!!それだけでいい。たった二言に、十年分の愛が宿る
ナツガタリ応援になります!
元々作者様の作風が好きでして、下町とゲスモブ(貴族含む)を書かせたら天下一品だと思っているのですが、こちらの作品もため息が止まらないほど存分過ぎるほど魅せてくれました。
この作品は別作家様のアンソロジーで参加されている短編でして、それをナツガタリに合わせて大幅リメイク。
どちらも堪能できるファンにとってご褒美しかありません。
主人公は毒の宝石と呼ばれるヴァレンティン。
宝石とは美しいものでしかないのに何故彼は毒を纏うのか。そして毒を好んで纏うことで他を一切寄せ付けない一級品の仕上がりへと昇り詰めていく。
この毒の宝石が仕上がるまでのヴァレンティンの過去深堀りを見…続きを読む - ★★★ Excellent!!!貫くは硬派で甘い刃。毒を纏ってしか触れられぬ指を、哀れと思うなかれ。
息を飲むほど緻密な絵画。
編まれた言葉の美しさと、計算され尽くされた熱に踊らされるうちに読了していました。
まさにふたりが抱く恋のように、
硬く鋭く、研ぎ澄まされているのに歪でそして美しい。そんな芸術品を眺めるようでした。
確かに熱はある。それも燃えたぎるほどに焦れったく。
しかしそれをありのまま剥き出しに見せるのではなく、美しく飾り立て「触れられるものな触れてみろ」と挑発するほどの圧倒的な迫力を持って突きつけられる。
作者さまの作品を拝読するごとに思い知らされるのです。
文章とは、これほどまで自在に形も温度も感触も変えられるものなのかと。
今回は特に、孤高の芸術のように研がれた棘が、毒を…続きを読む