概要
嘘から始まった恋だった。けれど、好きになった私だけは、本当だった。
高校二年の夏。海辺の町に暮らす宮原蒼は、雨の夜のコインランドリーで、相沢凛と名乗る少女に百円を貸す。温かいココア、青い花、古い映画、海沿いの喫茶店。何気ない時間を重ねるうち、蒼は少しずつ彼女に惹かれていく。けれど、凛の名前も、町へ来た理由も、蒼に近づいた目的さえも嘘だった。父親たちをつなぐ過去の事故、盗まれた記録、そして「朝五時十分、駅で会おう」という最後の約束。待ち合わせに彼女は現れない。怒りと未練を抱えたまま二年が過ぎたある日、蒼のもとに一通の短いメールが届く。名前が嘘でも、出会いが仕組まれていても、あの夏に生まれた気持ちまで偽物だったのか。雨と海と一輪の青い花をめぐる、喪失のあとから始まる青春恋愛小説。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!言葉にしないからこそ伝わるもの
とても静かな物語なのに、読み終わったあとに残るものが大きい作品でした。
特に好きだったのが、台詞の選び方です。
大切なことを直接言わせるのではなく、「高くなったね、ココア。」とか「百円、まだ返してもらってない。」みたいな、何気ない言葉で気持ちを伝えているのがこの作品の空気感を象徴してます。
その一言の裏にある感情を、読み手が想像できる間にしてくれています。
雨や海、コインランドリー、ココア、花、そして「名前」といったモチーフも印象に残りました。最初は何気なく出てきたものが、物語が進むにつれて少しずつ意味や、感情を持ってくる感じも心地よい。
物語の全ての答えを出してしまうのではなく、…続きを読む