小さい頃、田舎が地元の自分は、都会に出て驚きました。春には桜が儚く咲き誇ったであろう、今は鬱蒼と緑が茂る桜並木に、大音量で聞こえました。「こんなに大きく、五月蝿いんだから、誰かがわざとラジカセの大音量で流しているんだよ」と、もう誰だかも忘れた子が言っていたのを思い出します。その音は、蝉の声です。この小説は夢のような、うつつのような世界観で、夏という季節の、うざったく纏わりついてくる湿気と喧騒を描いているようです。
もっと見る