概要
俺たちはスマートに負けるくらいなら、泥まみれで勝ちに行くさ。
午前二時は、噓がいちばん軽くなる時間だ。
誰かがメールを一通、送る。責任を、いちばん下のひとりに寄せて。送信ボタンひとつで、そいつの明日が消える。よくある話だ。どこの会社にもある。
その夜だけ、廊下に濡れた足跡が残るという。晴れているのに、雨と泥のにおい。防犯カメラは、何も映さない。入館記録もない。朝になれば問題だけがきれいに片づいて、机に、泥のついた名刺が一枚。それだけだ。
結城は、若い技術者だった。障害の責任を、ひとりでかぶらされた。二十五で、もう壊れる寸前だった。……そこへ、七人が来た。
泥だらけの靴。くたびれたスーツ。堅気には、見えない。
責任を黙って背負う男。土下座で、相手の怒りを止める男。機械の声を聞く男。噓の金を、算盤ひとつで弾く男。言葉を証文に縛る男。な
誰かがメールを一通、送る。責任を、いちばん下のひとりに寄せて。送信ボタンひとつで、そいつの明日が消える。よくある話だ。どこの会社にもある。
その夜だけ、廊下に濡れた足跡が残るという。晴れているのに、雨と泥のにおい。防犯カメラは、何も映さない。入館記録もない。朝になれば問題だけがきれいに片づいて、机に、泥のついた名刺が一枚。それだけだ。
結城は、若い技術者だった。障害の責任を、ひとりでかぶらされた。二十五で、もう壊れる寸前だった。……そこへ、七人が来た。
泥だらけの靴。くたびれたスーツ。堅気には、見えない。
責任を黙って背負う男。土下座で、相手の怒りを止める男。機械の声を聞く男。噓の金を、算盤ひとつで弾く男。言葉を証文に縛る男。な
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!ゆっくり読ませていただきます!
1話ずつ、文字を食うように読ませていただきます。
自分にはない分野のお話でゾクゾクします!1話を何度も読み直して、満足したら2話目にと時間がかかりますが、自分にはない表現と文章で非常に魅力を感じました。
書けない分野のお話なので、たくさん勉強させていただきます。
最後書かれていた、おにぎりやお味噌汁の描写。あれが非常に響きました。疲れてるときのああいった食事、それを表現する言葉。なかなか難しくてダイレクトに読み手さんに伝えることが難しい場面だと思いますが、サクッと心に刺さる言葉で書かれていて読んでいて「すげぇ…」って言葉が漏れました。
これからのお話も、じっくりと読ませていただきます! - ★★★ Excellent!!!ログに残らない七人を、ログに残す話
印象に残ったのは、第1話の「どうせ、いつでもロールバックできる差分だから」です。これが仕事の話ではなく自己認識になっている。自分は取り消せる一行だと思っている人間。ここが冒頭で一番好きなところで、同時にいちばん寂しくなりました。
しかも、そう扱われることを本人が便利だと思っているように読めます。取り消しは、もう一度やることではない。なかったことにすることです。そのあとに続く「ここで泣くのは、ただのリソースの無駄だ」も同じで、自分の涙まで計算資源として処理している。他人にそう扱われた結果なのか、自分の覚悟なのか。
それが読めるのは、地の文がすべてエンジニアの語彙でできているからだと思います…続きを読む