概要
無とは、何もないことではない。気づく者すら、存在しないことである。
はじめに、無があった。
無とは、何もないことではない。無とは、何かが「ない」と気づく者すら、存在しないことである。ゆえに、この最初の無は、無とすら呼ばれていなかった。呼ぶ声が、まだどこにもなかったからだ。
暗くはなかった。光がないということは、暗いということではない。暗いと感じる目が、まだなかったからだ。
静かでもなかった。音がないということは、静かだということではない。静けさを聴く耳が、まだなかったからだ。
それは、ただ、在った。名づけようのない、途方もない持続。ディアノール後期の祭司たちは、これを指し示す言葉を、ついに一つしか残さなかった。
ンー。
意味を持たない、一音節。母音とも子音ともつかぬ、震えの前段階。現存する最古の写本——通称『無韻書』——の冒頭には、この一語だけが、羊皮紙の中
無とは、何もないことではない。無とは、何かが「ない」と気づく者すら、存在しないことである。ゆえに、この最初の無は、無とすら呼ばれていなかった。呼ぶ声が、まだどこにもなかったからだ。
暗くはなかった。光がないということは、暗いということではない。暗いと感じる目が、まだなかったからだ。
静かでもなかった。音がないということは、静かだということではない。静けさを聴く耳が、まだなかったからだ。
それは、ただ、在った。名づけようのない、途方もない持続。ディアノール後期の祭司たちは、これを指し示す言葉を、ついに一つしか残さなかった。
ンー。
意味を持たない、一音節。母音とも子音ともつかぬ、震えの前段階。現存する最古の写本——通称『無韻書』——の冒頭には、この一語だけが、羊皮紙の中
この旅を見届けてくださることに、心から感謝します。
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