概要
フェリーしかない海を渡って、言えなかったことを言いに行く。
二〇〇六年、八月。高三の夏。
元野球部エースの雄太が言い出した。「淡路島、ママチャリで一周しようや」。
受験生の恵太は塾に嘘のメールを送り、母への連絡用のメモ帳に嘘を書いて、午前五時の集合場所「北裏」へ向かう。写真係の順嗣は、進路調査を白紙で出したまま。四人目の諭は「僕はどっちでもいいよ」が口癖で――なぜか、淡路島の道にやたら詳しい。
自転車では渡れない明石海峡を、たこフェリーで渡って百五十キロ。パンク、地獄の坂、日本の夕陽百選。予定は二泊三日だった。台風が、一日足すまでは。
フェリーは欠航。テントは張れない。宿は満室。金もない。行き場を失った夕暮れ、ずっと聞き役だった諭が、初めて自分から口を開く。「……あのさ」
それぞれが言えなかったことを抱えて走る、ひと夏百五十キロの物語。
元野球部エースの雄太が言い出した。「淡路島、ママチャリで一周しようや」。
受験生の恵太は塾に嘘のメールを送り、母への連絡用のメモ帳に嘘を書いて、午前五時の集合場所「北裏」へ向かう。写真係の順嗣は、進路調査を白紙で出したまま。四人目の諭は「僕はどっちでもいいよ」が口癖で――なぜか、淡路島の道にやたら詳しい。
自転車では渡れない明石海峡を、たこフェリーで渡って百五十キロ。パンク、地獄の坂、日本の夕陽百選。予定は二泊三日だった。台風が、一日足すまでは。
フェリーは欠航。テントは張れない。宿は満室。金もない。行き場を失った夕暮れ、ずっと聞き役だった諭が、初めて自分から口を開く。「……あのさ」
それぞれが言えなかったことを抱えて走る、ひと夏百五十キロの物語。
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