概要
元手なし。技術なし。あるのは鉄の知識と、半世紀先の未来だけ。
終電の総武線、鉄道事故。商社で二十年、鉄鉱石と屑鉄を世界中から買い集めてきた男が、鉄の折れる音を最後に聞いて死んだ。
目を開けると、そこは明治二十二年。筑前・若松。石炭の積出で沸き立つ港町の、傾いた廻船問屋の次男坊・和泉宗一郎、数えで五つ。
前世の俺が持っているのは、鉄を商いに変える勘定と、近代日本がどう鉄で立ち上がったかの記憶だけ。だが知識は、それ一つでは一文の値打ちもない。資本も、技術も、人脈もない五つの餓鬼に、何ができる。
——まずは、鉤(かぎ)一本からだ。
仲仕(なかし)の使う荷役金具がバラバラなことに目をつけた宗一郎は、寂れた鉄工所の老職人とともに「折れない鉄」を打ち始める。元手の工面、職人の口説き、競合の安売り、父との対立。一銭一厘を積み上げ、石炭と鉄の半世紀を先読みして、少年は
目を開けると、そこは明治二十二年。筑前・若松。石炭の積出で沸き立つ港町の、傾いた廻船問屋の次男坊・和泉宗一郎、数えで五つ。
前世の俺が持っているのは、鉄を商いに変える勘定と、近代日本がどう鉄で立ち上がったかの記憶だけ。だが知識は、それ一つでは一文の値打ちもない。資本も、技術も、人脈もない五つの餓鬼に、何ができる。
——まずは、鉤(かぎ)一本からだ。
仲仕(なかし)の使う荷役金具がバラバラなことに目をつけた宗一郎は、寂れた鉄工所の老職人とともに「折れない鉄」を打ち始める。元手の工面、職人の口説き、競合の安売り、父との対立。一銭一厘を積み上げ、石炭と鉄の半世紀を先読みして、少年は
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