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概要
呪いを解こうとは思わなかった。「はい」を、自分で選びたかった。
二〇三三年、四月。コールセンターの電話は、ほとんどAIが取るようになっていた。
残った少数の人間オペレーター、田中(28歳)。頼まれたら断れない呪いのような性格で、AIが三回振り分けても捌けない難案件が、今日も彼に回ってくる。
「田中くん、ちょっと今のクレーム、代わってくれない?」
「はい」
口が、勝手に動いた。毎回、そうだった。断ろうとすると、喉の奥が詰まる。いつから、こうだったんだろう。それも、もう、思い出せない。
辞めたいけど、次がない。このままでいいのか。言語化できない違和感を抱えたまま、六年が過ぎていた。
そこに、年に一度の内部監査でやって来たのは、よれたパーカーの来栖慎吾(41歳)。元・業務改善コンサル。見るからにやる気のないこの男は、田中の業務ヒアリングの途中で、缶コ
残った少数の人間オペレーター、田中(28歳)。頼まれたら断れない呪いのような性格で、AIが三回振り分けても捌けない難案件が、今日も彼に回ってくる。
「田中くん、ちょっと今のクレーム、代わってくれない?」
「はい」
口が、勝手に動いた。毎回、そうだった。断ろうとすると、喉の奥が詰まる。いつから、こうだったんだろう。それも、もう、思い出せない。
辞めたいけど、次がない。このままでいいのか。言語化できない違和感を抱えたまま、六年が過ぎていた。
そこに、年に一度の内部監査でやって来たのは、よれたパーカーの来栖慎吾(41歳)。元・業務改善コンサル。見るからにやる気のないこの男は、田中の業務ヒアリングの途中で、缶コ
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