サージス

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サージス


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(Wikipediaより)


Surgesサージス』とは、2024年8月12日に公開された日本映画である。監督は白波景良しらなみけいら、主演は同上。脚本家は本作が処女作となる浜村葦考はまむらいこう。オリジナル作品であり、ある夏を通して青年の苦悩、懊悩。そして、それを海に向かって吐く独白を描いた物語。若者の抱える青い悩みが共感を呼び、一躍話題となった。


[あらすじ]


 人波に埋もれ、人並みな息の仕方を忘れ、全てに疲れて日々を過ごせなくなった青年、白田しろたケイがいた。そんなケイには休職期間が設けられ、それを使って地元でゆったりと休養を摂る手筈となった。


 そんな中、ケイはふと立ち寄った地元の海の波打ち際にて、波のうねりに話しかけられる。彼の全てを知っているそのうねりは、ケイが抱える悩みを全て解決する代わりに、彼に海へと同化することを求めた。不良品と化したケイの心はそれを安く承諾し、ケイの悩みを解消するため、独白を続ける日々が始まった。


 なだらかに明かされていくケイの過去。それは彼が幼かったゆえの誤ちが起こした蟠りの数々で、それに対する贖いを、海へと矢継ぎ早に吐き出していく。


 日に日に窶れ、日に日に清々しい気持ちに変わっていくケイ。海はいつも悠然と構え、全てを許してくれる。すると悩みは次第になくなり、海に同化してもいいという気持ちも日増しになっていたある日。全ての贖罪を吐き終えた彼は、海へと足を運んで──。


 そこで気がついた。海に贖ったって、意味がないと。


 馬鹿馬鹿しくなった彼は海を跳ね除け、自分なりの贖罪を、然るべき人に向けることにした。全てを許してくれる環境は、生温いことこの上ないということに気がついてしまったから。


♢♢♢


「……もしもし」

「あ、景良さん。お久しぶりです」

「3日ぶりは久しいか……? ……で、朝早くからなんの用だ」

「いや、脚本が1本書けたので、見てもらおうかと」

「父親に頼めよ」

「ううん。父さんが、〝脚本なら白波に頼れ〟って」

「……分かったよ。今回も手は抜いてないな?」

「もちろん」


 電話を繋ぎつつ、メールに添付されていた『脚本:ボツになるかも』を開く。ひとたび開いたその世界には、毎度の如く驚かされる。こうも役者心を擽られるものは、そう易々と書けていいものではない。

 仮に続けて演じてみろ。満足感のキャパシティが並だと、こぼれ出でたそれに、独り静かに溺れてしまうだろうから。


「……まだ若いのによくやる」


 葦考に『OKだ、それで進めていこう』と連絡を入れ、そのまま所属している事務所にも一報を。事務所から更に大手へと、この隙のない脚本の映像化を持ちかけるために。

 そして俺は必ず、その必ず進むプロジェクトの過程で行われるオーディションに参加する。葦考こいつの書く脚本だ。練りに練られた礎の、いちばん真ん中で演じて魅せたいじゃないか。


 そう。そのために俺は……俺たちは今日も、出せるだけ精一杯の最高を目指す。


「はは、にしてもこりゃ良い。はっきり言って最高だ。……が、いい加減戯曲とかも書いてみてほしいもんだね。続けざまの映像化の打診だ、また事務所からの勧誘が強火になるぞ?」

「僕は一端の中学……高校生だから。ていうか勧誘が止まないのって、高校生以下は入団させない、っていう誰かさんの拘りが僕をずっとキープしてるからなんじゃないの? どこにも所属させないからずっと強火なんじゃ……っていうか、戯曲は景良さんが書いてほしいな。劇団ケイライズの演劇は、景良さんにしか出せない味でしょ?」


 凪いでも荒立ってもいい。

 ただ、描いた未来のその先を、しっかりと見据えて。


「はは。それもそうだ。毎回観てくれてありがとな、細っこい太客さん」

「こちらこそありがとね、細っこくもない太パイプさん!」

「誰が〝細っこくもない〟だ。もうすぐ三十路でここまで体型維持ができる奴はそうそういないだろうが」

「あははは! っははは、はは……ひぃ〜……」

「全く……もう要は済んだな。切るぞ」


 そう。


「はははは……あ、そうだ。毎度朝早くにごめんね」

「ん。それじゃあな」

「……景良さん」

「何だ?」


 あの日遠のいた波のうねりを、忘れないように。


「……次も、その次もよろしくね!」

「っ……おう!」


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サージス とまそぼろ @Tomasovoro

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