本当の強さ(本編第18話まで、読破後推奨)

「レーアよ。勇ましいのは良いが、もちっと周囲を考えられるようにならんとな?」


 ある日、任務を終えた私は、その報告をしに大神帝様の元を訪れていた。


「何を仰います。弱き神など何の役に立ちましょう?そんな神々奴らを気に掛けていては任務に支障をきたします」

「うむ……だが、お前はまだ1800万歳だ。他神の能力サポートも時には必要だとは思わんか?」


 最近、代替わりなされた大神帝様は、どうやら仲間意識くだらないことに重きを置いているようだ。1人の方が楽なのだがな。


「確かにそういった面もあるでしょう」

「なら、少しは――」

「しかし!それはの神の話です。あいにく、私はではございません。【大地神、殲滅の一撃クリティカル・オブ・レーア】に太刀打ちできる者などおりませんよ」


 尚も何か言いたそうだったが、失礼、とだけ言い残しその場を去る。神殿を出た私はいつものように近くの森へと向かった。

 ここは良い。心が洗われるようだ。気分転換には丁度良いな。


「全く!弱い神がいくらいたところで何の役に立つというのだ……!」


 先程の大神帝様の言葉を思い出す。憤りにも似た感情を抑えることができず、思わず手近な大木を殴りつけた。


「あぅ」

「なんだ?今、声が……え?」


 声がしたと思ったら、何かが目の前に落ちてきた。反射的に腕を伸ばし支える。見ると、ぷにっとした手触りの足や腕、柔らかな温もりを感じる体。そして、黄金色のサラリと流れる髪が印象的な幼子を抱っこしていた。


「お前、誰だ?親はどうした?」

「ん、わかんなぃ……」


 はぁ、こういうのは。子供は苦手だ。弱いしすぐ泣く。見た感じ300万歳位か?このまま児童施設にでも行くか。あそこなら万一、身寄りのない子供でも引き取ってくれるからな。


◇◇◇


「可愛い子じゃないか!」

「レーア、将来のために子守りの練習かい?」


 馴染みの店の天使達が次々に声を掛けてくる。いくら違うと否定しても通じない。さっきからしがみついてくる幼子この物体、実に困るな。

 ま、可愛いのは否定しないが……それにしても、お前を見てると不思議な気持ちになるな。なぜだか知っているような気がする。そう思った時――


 眩い光の柱が突然、立ち昇り腕の中の幼女が消えていく。これはまさか、伝承にある時空間移動!?私以上の能力……そんな馬鹿な!あんな幼子が!?

 確かに私を遥かに上回る神力を感じる。強さとは力ではないのか?今一度、考え直す必要がありそうだ……。


「ふっ、たまには他の神々奴らも気に掛けてやるか」 

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『ギャル女神』外伝【1000文字以下で読める各話独立短編集】 千央 @reonmariko

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