目を開ける前に

@5-00_AM

1話完結


青い空に一羽のカモメが飛んでいる。


太陽は空高く昇っており、その男は船の上で腕を伸ばしながら、大きなあくびをした。



...再び男が空を見上げると、そのカモメの姿はもう見えない。


手慣れた手つきで、まわりを見渡しながら網の回収作業に取り掛かる。先ほどと同じように、ずっしりとした重い網に手ごたえを感じる。


男は前日の儲けを思い出しながら、長い網を引き寄せていく。すると、いつもと違った雰囲気を感じて一度手を止める。



いつの間にか、空はどんよりとした雲で覆われている。



静まり返った空気と薄暗い空の下、網にかかっている魚はどれも弱々しく不気味に映る。

男は焦燥に網を寄せながら、これは期待できないとため息をついた。


しかし、網を回収しないわけにはいかない。





しばらくして網の回収が終わる間際になると、薄暗い深淵の奥で大きな魚の影がかかっていることに気づいた。


男は期待を再び膨らませ、力いっぱいに網を引き込む。



ところが、魚の引く力はあまりに強い。一瞬のうちに船の外へと放り出されてしまった。





冷たさを感じながら、男は船に向かって必死に手を動かすが、なぜか浮き上がることができない。まるで何かに押さえつけられているかのようである。


深い闇の中、足を引っ張られる感覚とともに、大きく死んだ目が自分を覗いているのがみえる。


...男は薄れゆく意識とともに、

自分のおこなっていたことを後悔していた。


やがて視界が真っ暗になり、

深く目を閉じていく。





日の高く昇った青空にカモメが飛んでいる。 


船の上で目を開く男の足を、一羽のカモメがつついていた。




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