小泉構文 VS コンビニ! 勝つのはどっちだ!?
小林勤務
第1話 コンビニ
主婦(客)「すいません、ピザまんください」
小(店)「いらっしゃいませ。お客様――ご注文はありますでしょうか?」
主婦「ピザまんください」
小「わかりました。お客様がピザまんくださいと仰ったということは、今お客様は――ピザまんをご注文されたということでしょうか?」
主婦「あ、はい」
小「わかりました。ピザまんは――――ピザを包んだ肉まんですから、きっとお客様は肉まんを食べているのに、まるでピザを食べているように不思議に感じるでしょう」
主婦「うん、はい」
小「ピザまんは美味しい。実に美味しい。私も――ピザまん好きですから、毎日でも食べたい。ですが――毎日食べたいということは毎日でも食べているというわけではないです」
主婦「あの、どうでもいいんですけど温めてもらえますか?」
小「温める――――つまり、お客様はピザまんは冷たいよりも温かいのがお好き、ということでしょうか」
主婦「ええまあ」
小「確かに――――ピザまんはケースに入れたばかりだから温かくはありません。しかし―――――――――時間が経てばケースに入れたピザまんは温まる、ということでもあります」
主婦「えっと……。どうでもいいんですけど、ピザまんを温めてくれませんか」
小「なるほど――――――――つまりお客様は――」
主婦「あの、毎回毎回話す時に長いタメいらないですから」
小「なんだ、そういうことなら早く仰って頂ければ、私もお客様を不快にすることなく―――――――――素早く――――――――明確に――――――お客様の質問に―――――――お答えできるというものです」
主婦「いや、全然変わってないし。もしかして、あなた新人さんですか?」
小「新人かと問われれば――――新人です、と答えるほかないと思います」
主婦「わかりました、新人なら仕事に慣れてないから仕方ないわね」
小「そう仰って頂けると、私としても大変有難いと思っています。しかし――今の自分は、過去の自分がいて、未来の自分になる、そう――思っています」
主婦「さっぱりわからないんですが、何も考えてないなら無理に喋らなくても大丈夫ですよ。このままだと埒が明かないから店長呼んでくれませんか?」
小「お客様――今店長呼んでくださいと仰いましたか?」
主婦「ええ。早く呼んで下さい」
小「わかりました。あくまで仮定の話ですが、店長が私だとしたら、お客様はどう思われますか?」
主婦「え、あなた店長なの?」
小「あなた店長なの?―――――そう問われれば、はい私が店長です、と答えることが―――――――やはり正解なんだと思います」
主婦「ん? ちょっと待って。さっき仮定の話って言わなかった?」
小「はい、確かに私は先ほど仮定の話だとお答えしました。ですが――――仮定といっても、仮定というのはあくまで仮定の域を出ない、そういう意味でもありますから――――――やはり、お客様の問いかけには、私が店長ですと答えるのが――」
主婦「どうでもいいけど、あなたが店長なの? このお店大丈夫? クレームばかりじゃないの?」
小「それは私も反省しているところです。やはり、私が最も反省すべき点は――――反省していると申し上げましたが、まるで反省しているように見えない、そう思われていることに対して――反省しなければならない、そういうことだと思います」
主婦「全然反省してないじゃない。全く意味もわからないし」
小「意味がわからない――確かに、このようなやりとりは長い人生の中では意味を成さないかもしれません」
主婦「もしかして、あなた私を馬鹿にしているの?」
小「いえ――――決してそのようなことはありません。人を馬鹿にするということは―――――つまり―――――――その人が馬鹿ということを―――――――――」
主婦「絶対、馬鹿にしているでしょ? あなた今まで仕事したことあるの? そんな態度で仕事が務まると思う?」
小「私自身、確かに経験という意味においては足りない。やはり――――今のままではいけないと思います。だからこそ私は今のままではいけないと思っている」
主婦「絶対、思ってないでしょ。あなた、そんな仕事ぶりなら、あっという間にクビにされるわよ。世の中そんなに甘くないんだから。よくそんな体たらくで今までやってこれたわね」
小「確かに――私自身もそう思います。もしも――30年前に戻れるのならば、30年前の自分にこう問いかけたい。おい、30年後お前は何歳になっているんだ、と」
主婦「もういいわ。面倒くさいから、さっさとお会計するわ」
小「わかりました。お客様はピザまんだけをご注文された、ということでよろしいでしょうか?」
主婦「もうそれでいいわよ、言っても無駄だし。これ、いくらなの? 値札も剥がれているから、値段がわからないじゃない。そういうところも、ちゃんとしてないわね」
小「ピザまんの値段はいくらか―――――ええ、お客様のご質問の意味はわかっています。ピザまんの値段――――――くっきりとした姿は見えているわけではないんですけど、おぼろげながら浮かんで来たんです、46という数字が」
主婦「なに? ピザまんが46円なの? そんなわけないでしょ」
小「ええ、ピザまんが46円はありえない。確かに――お客様がおっしゃることはごもっともです。私自身もそう思います。ですから46円というのは―――きっと――レジ袋のことだと、そう――――――――思っています」
主婦「いやいや、レジ袋でもありえないでしょ」
続く(永久に)
小泉構文 VS コンビニ! 勝つのはどっちだ!? 小林勤務 @kobayashikinmu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます