序盤で主人公の特殊な性格(もしかしたら障害なのかも)を残酷に描きつつ、ファンタジックで彩り豊かな中盤~後半、そして多くのキャラクターが涙を流す最終幕へと流れる様子が、適度な寂しさ・虚しさ・孤独感に支えられ、通常のエンタメ系短編とは全く異なる読了感を演出しています。モノクロからフルカラーへと色彩が変わっていき、最後に伝えるべき「感情」「心」といったものの存在が感じられ、優しいのに鋭い描写力に圧倒されました。
人生とは、つまるところ、言葉にならない感情の連続なのでしょう。彼女は、なぜ花を育てることを選んだのか。それはきっと、言葉にしようとすればするほど、感情がその形を失っていく、という絶望を知っていたからでしょう。だからこそ、彼女は言葉ではない、もっと純粋な「何か」を求めた。それが花だった。言葉という不確かなものを捨て、ただひたすらに、ありのままの感情を込めて花を咲かせ続けたのです。そして、少年はなぜ彼女の庭に迷い込んだのか。彼もまた、言葉にできなかった後悔を抱えていた。伝えられなかった「さよなら」や「ごめんね」が、心の奥底で重くのしかかっていた。…続きを読む
静かな世界観だ。そもそも花は声を持たないものだが、本作では逆転の発想が行われていて、美しい童話を読んだように、感動がさざなみだってくるのだ。主人公の「彼女」の年齢は、いくつくらいだろうか。おそらく少女くらいだろう。そして、主人公の思いは、この物語を通して、永遠に伝わり続けることだろう。静かな世界観が薫り立つ秀逸短編。
作品を通して紡ぎ出される言葉の全てが、印象派の絵画を想起させる作品です。言葉で綴られる絵画の妙に、しばし目を閉じて、その風景を味わえる。話しの内容も印象的な事物を、独特の文体で引き立てるような構成には、作者の類稀なセンスの良さを感じます。文字に親しみながら、印象的な風景へ、思考の羽根を大きく広げる。そんな素敵な体験を、してみたいと思いませんか?素敵な作品に感謝と賛辞を
もっと見る