【短編】チート全部盛りの俺、凄すぎて仲間から追放されました
どとうのごぼう
短編 チート全部盛りの俺がパーティ追放!?
「俺がパーティ追放!? な、何でだ……!?」
俺は驚きのあまり声を張り上げた。
勇者のユウが言いにくそうに口を開いた。
「それはな、カイル……お前が凄すぎるからだよ!!」
「いや意味分からん!? 追放って普通、無能扱いがされるやつだろ!?」
すると、女魔法使いのマホが冷ややかな目を向けてくる。
「だってカイルのスキル。全部チートレベルなのに何かしら欠陥あるじゃん。
そ、そんな……俺はみんなの為にも必死で頑張ってきたのに!?
「確かにそれはそうだけど……でもそれを承知でみんなはパーティに入れてくれたはずだろ!?」
俺の問いにユウが声を荒げた。
「それに関してはこっちも悪い……だがここまでとは思わなかったんだよ!! なんだよ
「それの何が問題なんだよ!
全員を俺が守れるんだぞ? 問題どころか最強スキルだろ!?」
「確かにそのスキルは強い。だから負けた事は一度もない……。お前と三年間旅をして、冒険者ランクEだった俺たちが今じゃ
さらにユウは声を張り上げた。
「戦闘中に『ぎゃあああああああ!!! 死ぬううううう!!!』とか『もう……ひと思いに殺して……』とか、挙句に『……生まれてこなければよかった……』とか、めっちゃこっちのメンタル折ること言ってくるじゃん!!」
「だって痛いものは痛いんだから仕方ないだろ!?
それにそこは俺の
そこへ、横から賢者のエルフ、エルが言葉を挟んだ。
「それが困るのです……。確かに私たちは苦しみませんが、カイルさんが苦しみ続ける横で戦う。それもずっとカイルさんの悲鳴を聞きながら……。それには、私たちも参ってしまいました……」
エルは申し訳なさそうな声色で告げる。
そんな悲しそうな目で言わないでくれ! 逆に刺さるから!
「それにお前の
「えっ? あれは1度見ただけでどんな敵のスキルや魔法もコピー出来るっていう、マイナス効果のないやつだぞ?」
ユウは憤りを隠せない様に捲くし立てる。
「でもそれ、常時発動な上、俺らの魔法やスキルも完全コピーするじゃん!! どれだけ努力して会得したスキルも完全コピーされるの、こっちめっちゃきついんだぞ!!??」
そこで、マホが溜息を吐いた。
「私が子供の頃から毎日修行して、十数年かけてようやく会得したドラゴンをも滅する古代魔法――カイルがコピーして二秒後にあっさり使った時、『私の十数年なんだったんだろう……』ってなった」
マホは淡々と告げた。
良心がぐさっと痛んだ。
「まあ、それは私の性根がダメだからなのは分かってるけどね……。
凡才の私がどれだけ努力しても、生まれながらにチート能力持った天才の方が上なのは頭では分かってた……。なのに、実際に経験したら心が折れかけた……。だから私が弱いだけ……」
自分を責めるように呟くマホ。
「あの……マホさんの努力もその成果も十分凄いです……! だから、そんなに落ち込まないでください……!」
エルが優しい声でマホを励ました。
……マホとエルのやり取りを見ていると、俺が完全に悪者扱いされている気分だ。
いやまあ、追放される奴って大体そうらしいけども。
ユウは更に続ける。
「カイル、お前の料理スキルも問題なんだ。
「それはみんなが美味しい物を食べられるようにって、宿の台所を借りて野宿の際にも作って……それの何がまずいんだ!? 美味しくなかったの無理して食べさせてたのか!?」
マホは首を振って、苦笑混じりに答えた。
「ううん、美味しい。死ぬほど美味しいよ。一口食べるだけで毎回涙出てたでしょ? もう病みつきになってるから……」
「でもお前の料理、毎日食べたせいで舌が肥えて何食っても”まずい”としか感じない身体になったんだよ!! 王都の超高級料理店でメシを食っても生ゴミ食ってる感覚になった程だぞ!?」
「え、マジで!? そこまでだった!?」
エルが深刻そうな顔をした。
「そこまででした……。10ゴールドで買えるパンも、王都牛のステーキも、妹が私の誕生日に作ってくれた手作りのクッキーすらも同じ味にしか感じなかったんです……」
エルは悲しげに視線を落とす。
「あの子の手作りクッキーだけは、ちゃんと味わいたかった……」
いたたまれない顔で呟くエル。
……なんというか。
直球で責めるユウやマホより、あんまり責めてないエルが、一番俺の心抉ってくるのなんなの!?
これ、無自覚でも意図的でも恐ろしいわ!!
ユウは更に続ける。
「それに、
マホは遠い目をしながら話す。
「
エルが悲しい表情で言葉を紡いだ。
「ですので……今の私たちはカイルさんに依存して生きている状態なんです……」
ユウが話を締める様に言った。
「それ以外にも沢山あるが……これ以上世話になったお前を責めたくはない」
その声音には怒りよりも、仲間としての情が滲んでいた。
「お前を追放する件はな、お前だけの問題じゃないんだ。俺たちも悪いんだ」
マホが話を引き継ぐ。
「私たちもカイルに依存しすぎたからね……。自分の力じゃなくてカイルの力に頼ってばかり……楽してたツケが、三人全員に返ってきたって訳」
エルは寂しげな表情で紡ぐ。
「どんなに凄いチート能力も、それに頼り過ぎたら駄目だって分かりました。……だから、カイルさんには申し訳ないですが、私たちは自分の力で生きていきます」
三人の言葉を聞いて俺は――。
「……分かったよ。確かにみんなの言う通りだ。
俺はパーティを抜けるよ。名残惜しいが、俺がいるせいでみんなが不幸になるぐらいなら抜ける」
仕方のないことだ。
自分の力で生きる事は尊い。だからと言ってチートだって悪じゃない。
どちらが正解ということはない。
これは各々の考え方の違いだ。
「決断してくれてありがとう……。
お前は凄い奴だからどこでも成功するだろう。幸運を祈ってるよ」
ユウが寂しげな笑みを浮かべた。
「さんざん嚙みついておいてなんだけどさ。アンタは生まれ持って凄い才能を持ってるんだから、
私みたいな凡人の妬みは気にせず、カイルなりの道を進んでね」
マホの声には今までの棘はなかった。
ただ静かな温もりだけがあった。
「私たちは私たちなりのペースでこれから頑張ります。
カイルさんも新天地でご活躍できるようお祈りします」
エルは柔らかな表情で微笑んだ。
「今までありがとうな、みんな……。それじゃあな!」
俺は振り返らずに手を振った。
涙がこぼれそうだったから、振り返ることなんてできなかった。
◇ ◇ ◇
――数年後。
カイルは大国を率いる騎士団長となり、富も名声も手に入れた。
その活躍は後世に語り継がれるほどだった。
ただ、チートスキルを使うのは周りの為にほどほどにしたという。
ユウたちは舌が肥えた問題などは一年かけて克服した。
だが、冒険者ランクは
しかし、元がEだった事を考えれば、三人は目まぐるしい結果を収めた。
ひとえに三人が自分たちの力で生きた成果だった。
こうして、両者は別々の道を歩み、別々の幸せを手にしたという。
終
◆ ◆ ◆
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【短編】チート全部盛りの俺、凄すぎて仲間から追放されました どとうのごぼう @amane907
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