迷宮探索が合法職業となった現代日本。
貧困と家庭崩壊の中で生きる高校生・吉常天麻は、迷宮探索のバイトで生活費を稼ぎながら、母への憎しみと将来への葛藤を抱えていた。
そんな彼の前に現れた転校生・霧生夏海。
彼女の突拍子もない行動が、彼の閉ざされた心を少しずつ揺らしていく。
1話目から引き込まれます。
リアルな日常会話の中に、絶妙にダンジョン世界の設定を織り交ぜてゆく手法がお見事。
そのあとも圧倒的な筆力で描きだされる重い家庭事情とリアルな社会観、それにファンタジーの融合が絶妙です。
戦士クラス取得者の彼が冷静さと怒りを抱えながらも、霧生の純粋な情熱に動かされていく展開は熱く、ジワっと沁みました。
面白くて、続きがすぐに読みたくなる作品でした。
現代ダンジョンものとして、妥当性のある設定ひとつひとつをモノローグの中に巧みに織り交ぜており、場面毎の解像度が高く、それでいてクドさがない。
心理描写と状況説明のバランス感覚にも舌を巻きます。
主人公の生い立ちに裏打ちされた内面は(嘆かわしい事に)今時珍しくなく、それゆえに共感しやすいと感じました。
彼の心がヒロインとの繋がりを通して、少しずつ解きほぐされていく様子は、読んでいて心地好いですね。
上記に比例して戦闘面での成長がみられるのですが、こちらもバランスが良く、納得感があります。
この二人の物語が一人でも多くの方に届きますように。