第7話 愛の誓いと、新たな人生の幕開け

 あれから数年の月日が流れた。


 カイン様と私の関係は、穏やかでありながらも、深く強いものへと変わっていった。

 周囲の温かい祝福を受けながら、私たちはゆっくりと愛を育み、そしてついに、結婚式の日を迎えた。


 会場は、ローゼンベルク家とシュヴァルツ家の威信をかけた、盛大なものとなった。

 純白のウェディングドレスに身を包んだ私は、緊張しながらも、胸に溢れる幸福感を噛みしめていた。


(まさか、私がこんな形で、愛する人と結ばれる日が来るなんて……)


 祭壇の前で待つカイン様は、漆黒のタキシードに身を包み、その美しい横顔は、穏やかな微笑みに彩られていた。

 彼の瞳が私を捉えると、そこには深い愛情と、未来への希望が宿っているのが分かった。


 式には、アゼル王子とルミナも参列してくれた。

 王子は、心からの祝福の言葉を述べ、ルミナは、涙を浮かべながらも優しい笑顔で見守ってくれた。

 アランやレイモンドをはじめ、学園時代の友人たち、そしてローゼンベルク家とシュヴァルツ家の親族たちも、私たちの門出を祝ってくれている。


(あの頃、断罪されたいとばかり思っていた私が、今、こんなにも多くの人たちに祝福されているなんて、まるで夢のようだわ)


 神父様の厳かな言葉が響き渡り、私たちは永遠の愛を誓い合った。


 指輪を交換する時、カイン様の指が、ほんの少し震えていることに気づいた。

 私もまた、彼への溢れる想いに、胸が熱くなった。


 誓いのキスを交わすと、会場からは盛大な拍手が沸き起こった。

 祝福の言葉が飛び交い、私たちは、温かい笑顔でそれに応えた。


 披露宴では、アゼル王子がユーモア溢れるスピーチで会場を沸かせ、ルミナが優しい歌声で私たちの未来を祝福してくれた。

 アランとレイモンドは、相変わらず息の合った掛け合いで、場を盛り上げていた。


 そして、私が一番心を打たれたのは、カイン様のスピーチだった。


 彼は、ゆっくりとした口調で、しかし真っ直ぐな眼差しで、私への感謝の想いを語ってくれた。


「セシリア様。あなたは、孤独だった私の世界に、光を灯してくださいました。

 あなたの不器用な優しさと、誰よりも温かい心に、私はどれほど救われたか分かりません。

 あなたがいなければ、今の私は、ここにいません。

 今日、こうしてあなたと人生を共に歩めることを、心から幸せに思います。

 これからも、共に支え合い、共に笑い、共に生きていきましょう」


 カイン様の言葉に、私の目からは、とめどなく涙が溢れた。

 隣に立つ彼の優しい手が、そっと私の頬を拭ってくれる。


(ああ、カイン様……本当に、あなたと出会えて、よかった)


 私たちは、互いに見つめ合い、深く頷いた。


 あの時、私が悪役令嬢として断罪を目指した道のりは、決して平坦ではなかったけれど、その道のりの先に、こんなにも温かく、幸せな未来が待っていたのだと思うと、胸がいっぱいになった。


 披露宴の終盤、私たちは二人で、会場の庭にそっと抜け出した。夜空には、満月が優しく輝いている。


「ねえ、カイン様」


「はい、セシリア」


「私ね、なんだか不思議な気持ちなの。

 あの時、あんなに断罪されたかったのに、今は、こうしてあなたの隣にいられることが、本当に幸せだって思うの」


 カイン様は、私の手を握りしめ、優しく微笑んだ。


「私も同じ気持ちです。セシリア。あなたがいてくれるこの世界が、私にとっては何よりも大切です」


 私たちは、月明かりの下、そっとキスを交わした。あの頃の私には想像もできなかった、甘く、温かいキスだった。


 悪役令嬢として始まった私の物語は、断罪という結末を迎えることはなかった。

 けれど、その代わりに、愛する人と結ばれ、多くの人々に祝福されるという、かけがえのない幸せを手に入れた。


 これは、私が悪役令嬢として生きた証であり、そして、カイン様との愛の物語の、新たな始まりの瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『推し』を救うには、私が悪役令嬢になるしかない! ~なのに、なぜか好かれてしまうんですけど!?~ ましろゆきな @yukkosak

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画