さぁ踊ろうか【1分で読める創作小説2025】

ʖˋʖˋʖˋ

さぁ踊ろうか

「ははっ、字きったねー。」


  ふたりで

  だんすばとる

  せかいでいちばん


  やまと

    たつや


__と大きく紙に書かれていた。

 大会の前はいつも無性にこの紙を見たくなる。

 幼稚園児だった当時、覚えたての平仮名で一生懸命に書いたことを今でも覚えている。

 お互い目を輝かせて、そんな夢を話したのは……12年前。

 

「Judge!Red3Blue2

 Winner~ Denno&BaaBaa」


 去年、ヤマト&タツヤが日本代表になり臨んだ世界大会は、初戦敗退だった。

 アウェーの空気にのまれ、俺が十八番を外した。


 俺は今までこの誓いを胸に練習してきた。

 だが裏を返せば、幼い日に作ったこの紙きれ一枚に、気持ちの面で常に頼りきりだったともいえた。


 この願掛けに頼ってちゃアイツに勝てない。

 紙を見つめ、意を決する。


 ひとおもいに勢いよく紙を破いた。

 あの時に願ったからじゃない、今の俺が、世界を取りたいから行くんだ。


「わりータツヤ、便所並んでてさ。」

 相棒のご登場だ。

「おし、会場行くぞ。」


『ペアクルー部門』の受付を隣で行っている相棒を横目に、参加者のリストをちらりと覗く。

 アイツの名前もある。会場を見渡すと、ちょうど目が合い睨まれた。

 今までなら目をそらしていたが、今日は不思議と見つめ返すことができた。


 大会が始まった。

 

予戦3戦

本戦

準々決勝

準決勝

決勝戦


 ついにここまで来た。ここで勝てば、日本代表。

 決勝の相手はアイツのペア。


 MCがマイクでしゃべりだす。

「決勝戦のカードはタツヤ&Youto VS ヤマト&源氏!!

 今年は、去年の優勝者 ヤマト&タツヤがついに、決勝戦で対決となります!」


 アイツ__ヤマトが話しかけてくる。

 

「おまえみたいな腰抜けには負ける気がしねーわ。」

 元相棒は容赦のない言葉を吐き捨てる。

 アイツが去年みせた失望の顔を今でもよく覚えている。


「今日の俺は一味違う。」

 真剣な面持ちで言葉を返す。

 俺の覚悟を、この会場の審査員に観客に、そしてヤマトに見せる。

 視線が火花を散らす。

 

 Youtoが肩をぶつけて、ニヤッとした顔をみせる。

「かましてやろうぜ。」


 バトルの曲が流れだす。


 俺は最高に仕上がった十八番のウィンドミルを決めた。

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さぁ踊ろうか【1分で読める創作小説2025】 ʖˋʖˋʖˋ @lalala_soda

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