第4話

悠人は祖母の店を閉じたあと、静かに動き始めた。


古びた店舗の一部を改装し、「こども食堂 さちこ」と名付けた。

壁には祖母が使っていた鏡をそのまま残し、椅子も一脚だけ置いた。

食堂の奥、小さなスペースに、彼はハサミとドライヤーを並べた。


「ごはんのあと、髪も整えようね」

そう言って、彼は子どもたちの髪を切り始めた。


最初は、恥ずかしそうにしていた子もいた。

だが、鏡の前で髪が整っていくと、少しずつ表情が変わっていった。

「かわいくなったね!」「かっこいいじゃん!」

そんな言葉が、子どもたちの心に光を当てた。


ある日、虎刈りだった女の子が、整えられた髪で笑顔を見せた。

「おばあちゃんみたいに、髪切る人になりたい」

その言葉に、悠人は胸が熱くなった。


彼は祖母のノートを開き、空白のページにこう書いた。

「令和七年、こども食堂さちこ開店。髪と心を整える場所、再び」


祖母はその後、静かに息を引き取った。

だが、彼女の哲学は、悠人の手を通して生き続けている。


「髪を整えると、心も整うのよ」

その言葉は、今や子どもたちの未来を整える力になっていた。


― 了 ―

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髪と心と、ビューティーサロン・さちこの椅子 @k-shirakawa

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