1章 12/21
世間ではイルミネーションがキラキラ輝く12月21日。僕は目覚めたら病院のベッドで寝ていた。
「進夢!ボクのことが分かるかい!?」
イケメンが僕の顔を覗き込んだ。彼はまつ毛が長く、目元がキリッとしている。ショートの髪型が似合っているのが彼の顔の良さの証明になるだろう。僕が女の子だったら一目惚れしていたと思う。進夢、それがどうやら僕の名前らしく、彼に僕のフルネームを聞いたら赤木進夢だと答えてくれた。ただ、その人は男性にしては声が高いため、少し疑問に思った。また、彼は息が上がっていて、急いで来たというのが見てとれた。
「ごめんなさい…。貴方、誰ですか?」
「えっ…」
「ボクだよ!君の恋人の
その言葉を聞いて、記憶を失う前の僕は男性と付き合うのが好きなのか?と思った。でも、こんなにカッコイイなら付き合っても良いかなとも思ってしまった。
「…、失礼だけどさ、湯本さんは男性なの?」
「ボクは女だよ」
彼に会ってから、気になったことを聞いてみた。その返答で漸くその人が女性だと気づいたが、未だ信じられない。僕にこんな美人の恋人が居る筈もないし…。
「ねぇ、進夢。ボクが女だって証明してみようか?」
湯本さんが少しニヤつきながら聞いて来た。その質問に僕が戸惑っていると、彼女に腕を掴まれた。手から柔らかい感触が伝わった。そのままムニムニと触っていると小さく艶かしい声が漏れる。
「あ、あの…。そういうことは私達が居ない所で行っていただけるとありがたいんですが…」
看護師さんの言葉で、ビクッと体が飛び跳ねた。その拍子で手が離れた。彼女は体が飛び跳ねた後、赤面していた。湯気が立ちそうな程に赤面していて、数分間、黙り込んでしまった。
「すみませんでした…」
僕はひたすらお医者さん達に謝った。その必死な様子を見て「今回だけですよ…」と許してくれた。そして「彼女さんが落ち着いたら連絡お願いします」と言って去ってしまった。部屋に2人っきりになってしまった後、僕らは黙ってしまった。そしてこの状況が非常に気まずかった。
「さっきはごめん…」
「良いんだ。こっちこそ、周りを見ていなかったんだから…。悪いのはボクの方だ」
「先生!これはどういう事ですか!?」
覚えていないことを伝えると湯本さんは泣きながら医師に詰め寄った。
「進夢さんは現在、逆行性健忘という主に事故の衝撃が原因の記憶喪失になっています」
感情を露わにする湯本さんに対し冷静に医師は淡々と告げた。
「進夢は記憶が戻るのでしょうか?」
「絶対にとは言えませんが、戻る可能性もあります。ただ、戻る可能性は少ないです」
「そうですか…。教えてくれてありがとうございます!」
「まだ。進夢さんの記憶が戻ると確定した訳では有りませんよ?」
「それでも良いんです!ボクに希望をくれてありがとうございます!」
彼女の顔がさっきまで俯いていて凄く悲しそうな顔をしていたけど、希望が見えた瞬間に顔を上げて、目を輝かせていて少し明るくなったのが分かった。お医者さんは彼女のポジティブ過ぎる思考に苦笑いを浮かべていた。
「はいこれ。ボクの住所」
「え?なんで?」
お医者さんとの話し合いが終わった彼女は、帰り際何かを思い出したみたいで、僕の所に来て自分の住所が書かれた紙を手渡してきた。僕が戸惑っていると、彼女が「明日此処に集合ね」と笑顔で言っていた。
「それじゃ」
「…、待って!湯本さん!」
「何だい?」
彼女の語尾が上がり期待が高まっていることがすぐに分かった。多分「自分のことを思い出してくれたのか?」というものからだろう。だけど、そんな簡単にしかもこんな早くに記憶が戻る訳ないだろ、と心の中でツッコミを入れた。でも、僕が言いたいことは彼女が望んでいることじゃない。
「…、湯本さんは凄くイケメンだなぁって」
湯本さんは俯いてしまった。気まずい空気が流れた。そこで僕は彼女にとってはこの言葉は地雷なのだと思い訂正しようとした。
「湯本さん、ごーー」
「謝らなくて良いから!」
だけど、謝ろうとした瞬間に、勢いよくガラガラと病室のドアが閉められた。…、明日謝らなきゃ。…、これで彼女にとって僕は最高の彼氏から最悪の男に印象が変わっただろう。そんなことを思いながら僕はまたベッドに仰向けになった。
記憶をなくした僕が君をまた好きになるまで 冬夏波琉 @HaRu2403
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