世界一面白くない色鬼
天野 純一
第1話 世界一面白くない色鬼
「なあなあ、色鬼やろうぜ!」
休み時間に入るなり、コウセイがそうみんなに呼びかけた。彼は背が高くてイケメンで足が速くて、クラスの大の人気者だ。
「やるやる! なぁお前も行こうや~」
「おう、いいぜ。ユイも行くか?」
「うん、行く行く! ケイコも一緒に行こ!」
色鬼をする輪はだんだんと教室を波及していき、私――ケイコの元へもやってきた。
色鬼では、逃げる人が「い~ろ~い~ろ~な~にいろ?」と叫ぶと鬼が「赤!」みたいな感じで好きな色を叫び、逃げる人はその色のものを探して触る。鬼は五数えてから走りだし、その色に触っている人はタッチされずに済み、触っていない人が追いかけられるという鬼ごっこだ。
私は運動神経が良くない。鬼ごっこではだいたい最初から三番目以内にタッチされてしまう。だからあんまり好きじゃない。
と、ユイが「ヒミツヘイキ、いる?」と声を掛けてきた。
「ヒミツヘイキ?」
「うん」と頷き、彼女がお道具箱から取り出したのは――色鉛筆セット。
「……さすがにズルだよ、こんなの」
私がそう答えると、ユイは教室の隅のほうに目配せした。私もつられてそちらを見る。
コウセイがダイキを色鬼に誘っているところだった。
ダイキはクラスで一番賢い男の子。成績はいつも学年一位で、計算を間違えているところを見たことがない。将来は難しい中学校を受験して私たちとは違うところに行ってしまうらしい。
だが彼には大きな短所がある。
それは、負けず嫌い。勝負に勝つためなら一切手段を選ばない彼のやり口は、一部のファンを除いて大半の人に嫌われている。
ダイキはコウセイに対してこんなことを言った。
「俺を入れちまったら、絶対に勝っちまうよ。一人残らず駆逐しちまう。まぁ体力が続けばの話だけど」
クチク、という言葉は初めて聞いた。彼は難しい言葉をたくさん知っている。
ダイキは特に足が速いわけではない。何か作戦があるのかもしれない。
そのとき肩をトンと叩かれたので振り向くと、ユイだった。
「ダイキもやるならこっちも対抗しなきゃ。ヒミツヘイキを使ってね」
「そうだね」
私は思わずニヤリと笑ってしまった。
コウセイが叫ぶ。
「じゃあみんなで外に出ようぜー!」
運動場にみんな集まったら、彼が合図する。
「ジャンケンだ! 最初はグー!」
「「「「ジャンケンポン!」」」」
「「「「あいこでショ!」」」」
「「「「ショ!」」」」
「「「「ショ!」」」」
三回あいこが続いた末に、一人だけグーでそれ以外は全員パーになった。
一人負けしたのは他でもない――ダイキ。
私は色鉛筆を握りしめて待ち構える。ダイキが叫ぶのは何色だ。あんまりない紫色とか? でも紫色の色鉛筆は入っている。私の勝ちだ――。
コウセイの「せーの!」の合図で、逃げる人は口を揃える。
「「「い~ろ~い~ろ~な~にいろ?」」」
ダイキは一拍置いてから叫んだ。
「
世界一面白くない色鬼 天野 純一 @kouyadoufu999
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