3話

 寝室のドアが開いた音で目が覚めた。


 ガバッと起き上がるのと同時に、彼女がひょこっと扉から顔を出す。

「おはよう! 紅茶入れたよ」

 そう言って手招きするエナちゃんを見て、私は酷く安堵した。そんな自分に、私が一番驚いていた。


 テーブルの上に2人分の紅茶。向かい合って席に座る。

 窓の方に視線を向けても、もう地球は見えなかったし、確かに宇宙船のレバーは降りたままだった。


 もし。

 もし、地球爆発が、彼女の自信のなさの表れだったとしたら。

「何ニヤニヤしてるの?」

 ティーカップを持った彼女が、私の瞳を怪訝な顔で覗き込む。目が合って、じわじわと心が満たされていくのを感じた。

 地球がなくても、彼女の青い瞳がこちらを見ていれば、それで充分だった。

「案外、悪くないな、と」

 私の心は紅茶と共にポカポカと温まった。

「変なの〜」

 私の機嫌がいいのを見て、エナちゃんはそれ以上なにも詮索してこなかった。


 メープルの甘い匂いが、部屋に立ち込めていた。

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Saudade 衣ノ揚 @koromo-no-yogurt

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