『まだ見ぬ明日に恋をして』

ローズ

喪失。

別れは、唐突に訪れる。

そんなことは誰にだってわかっているはずだ。でも、誰もそんなことを常日頃から考えているわけではない。

あたしだってそうだった。

気づいていなかった。無意識に、知らないふりをしていた。

あたしは、失ってから気づいた。

そう、あれはつい先日の出来事だった。

あたしは、彼氏の遠野末日とおのまつひと一緒に帰っていた。

「そういえば駅前にカフェができたじゃん?明日行こうよ。」なんて話をしていた。

呑気に話していたから、気づかなかった。

信号が青だったのに横から止まる気配のないトラックが突っ込んできていたことに。それを見て、必死に「止まれ!」と言っていた末日に。

そのまま、あたしはトラックにはねられた。最後に見えたのは焦って警察を呼んでしまったであろう末日の姿だった。

その姿を見ながら「あぁ、死ぬのか。天国に行くんだろうな〜。いや、地獄かもな〜。」なんて考えていた。

そんなことを考えているうちに、あたしは意識を手放していた。


普通なら、その後意識を取り戻すことはないだろう。

しかし、不思議なことにあたしは意識を取り戻した。

そう、末日に取り憑く幽霊として。目覚めた時、末日の家の天井が見えたから、魂が抜けるほど驚いた。

いや、すでに魂だけの存在なのだが。

あたしが幽霊になっていると気づいた理由は、末日のお母さんに話しかけても返事が返ってこなかったからだ。

…それと、鏡に映っていなかったから。

でも、誰にも話しかけられない、というわけではなかった。

末日には、話しかけられた。

あたしがいるとわかった時、末日は泣き崩れてしまった。

…なぜだろうか。末日もあたしも、このままでいるのは良くないと感じる。あたしは、成仏しなくてはならない。そう、強く感じる。

だから、末日はあたしがいない世界でも生きていけるようにならなくてはいけない。

……別れは、突然来るんだよ。末日。

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『まだ見ぬ明日に恋をして』 ローズ @Rose0411

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