Okurimono
@Altkunstzirkel
Okurimono
詩人が言葉を紡ぐとき、
彼の口からこぼれるのは、砕けた音。
誰にも聞き取れず、意味をなさない声が、
ただ宙に溶けていく。
楽師が旋律を奏でるとき、
耳をすませても、そこに音はない。
指が鍵盤を叩くたび、
響くのは空虚な振動だけ。
画家が色を求めるとき、
目の前の世界は霞んでいく。
絵具を混ぜても、指先に残るのは灰色だけ。
形は崩れ、光も影も消えていく。
料理人が味を探すとき、
舌に触れるのは無の感覚。
甘さも苦さも遠ざかり、
ただ冷たい金属の味だけが残る。
彫刻家が手を伸ばすとき、
その指先は温度を忘れる。
触れたものの輪郭は曖昧で、
彫るべき形さえわからない。
それでも、見えない何かが彼らを導く。
聞こえない音が、言葉を運び、
色のない世界が、静かな調和を描き出す。
感覚が消えたその先で、
彼らは何かに触れるのかもしれない。
Okurimono @Altkunstzirkel
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