懐古厨が嫌いだ

時代は常に移り変わりゆくもの。


今の時代となっては第二次世界大戦のような「臥薪嘗胆」の感情は正しいものとはされていないし、昭和のセクハラタバコパワハラ上等な価値観は認められない。


古いものは日々アップデートされていく価値観によって淘汰されていく。


それに我慢してきた者、正しいと思わなかった者が意見を言える時代となり、それらが悪だと発覚したのだ。


だから、時代はどんどん正しい方向へ向かっていく。


それに抗い、「昔の方が良かった」などという懐古厨は嫌いだ。


新しいものを否定し、昔の方が良かった、昔の良さのみを妄信する者。それは愚か。


私もそう思う。



だが、本当に君の中に「古いものは全てダメ」があるのだろうか?



こういっちゃなんだが、私もある意味懐古厨だ。


「ナムコ・ナンジャタウン」というテーマパークを知っているだろうか?


90年代に池袋のサンシャインシティの中にオープンした屋内型テーマパーク。昭和、和風ホラー、ローマ、アメリカの風景をテーマとした場所だ。


昔はここに色々あった。

釣り竿のようなものを使ってモンスターを捕まえる「ガウストパニック」

小さなキャラクターを持ち運んで色々なミニゲームに挑戦する「ナジャヴの大冒険」

ヘッドホンをつけて爆弾を解除する「ボムレンジャー」


そのすべてが素晴らしかった。アトラクションの面白さのみならず、作り物ながら再現された雰囲気がとても素晴らしかった。


しかしそのナンジャタウンは2013年にリニューアルした。まぁリニューアルならどんなパークにも大なり小なりあるものだ。問題はそのリニューアル内容。


あろうことか、パークの敷地の半分を潰すというのだ。

ディズニーランドで言うなら「リニューアル後はトゥーンタウンとトゥモローランド、ファンタジーランドが消えます」と言っているようなものだ。


私はひどく落胆した。それからというものの、かつてのあのナンジャタウンはなぜ戻ってこないかとずっと不満を抱いている。


かつてのナンジャタウン。昔のナンジャタウン。


それにしがみつく私もまた醜い懐古厨だ。


世間の流行、人々はもうああいったテーマパークを求めていないのだ。意見を大きな声で言わずとも、すべての人が無言ながらにそういう風に変わることを求めたのだ。


その潰れたナンジャタウンの半分はJ-WORLD TOKYOという週刊少年ジャンプのテーマパークとなった後、現在はバンダイナムコクロスストアへと姿を変えた。

(途中MAZARIAというものにもなったけど1,2年しか無かったので…)


今やバンダイナムコクロスストアは溢れんばかりの人だかりができている。かつてのナンジャタウンのアメリカのエリア、ローマのエリアとは大違いだ。



時代は変わり、移り行くもの。それに置いて行かれる人間に価値はない。


だが、どう考えても昔の方が楽しかったはずだ。今バンダイナムコクロスストアの半分以上を占めているのはガシャポン。 クロスストアに限らず、あちこちガシャポンだらけだ。

ガシャポンの面白さを否定するわけではないが…… 本当にそっちで良かったのか?



きっと私が嫌っている懐古厨も、向ける対象は違えど同じような感情を抱いているのだろう。


他にもある。最近のクレヨンしんちゃんではしんのすけがぞうさん踊りをしなくなったとか……


だが、私は全てにおいて懐古厨なわけではない。


最近変わりゆくリベラルだのポリコレだのの価値観の変容には肯定的だし

仮面ライダーや戦隊などの特撮がキャッチーなものになっているのにも良い感情を抱いている。


だが、それらに不満を持ち「昔の方が良かった」と思うものは確かに居る。


私がナンジャタウンに向ける感情と同じように。


結局、変わった先を自分にとって受け入れられるかどうか、でしかないのだ。


この国の主権は国民。いわば大衆。それは政治の世界でなくとも同じなのだ。

世間というものが求める形に世の中は変容していく。その世間が小さかれ、大きかれ。


そしてそこから取りこぼされる者は確かに居る。私もまた、誰かを取りこぼしてしまうかもしれない。

人はひとりひとりが違う。だから、万人に満足の行く世界にはならないのだ。


だが……すべてが変わるわけではない。今でも一部の国はリベラルでもポリコレでもないし

いまだに昔の価値観を続けている場所がある。


新しくなった場所で苦しむ者

古いままの場所で苦しむ者


この世界は常に誰かをこぼさないと、成り立たないのだ。


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オッセイ 鉛色のイカリ @ThePurasu50

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