パ○プロやってんのか

白川津 中々

 5割80本70盗塁。

 みやこヤフルトスワンズに所属する内野手、周防王弩すおうおうどのシーズン成績である。

 パ○プロでやってんのかという成績はゲームバランスを著しく壊すものでありスワンズは12年連続12回日本一を飾るという快挙を成し遂げているが、全ての試合がワンサイドであるため興行として破綻し、通常通りシーズン戦は行われるものの2位が実質的優勝チームとしてクライマックスシリーズに出場。セ(セレクションリーグ)・パ(パワーリーグ)両リーグで雌雄を決した後に伝説挑戦という名目でスワンズと1ゲームを行うという流れになっていた。

 このデタラメな環境においては他チームは当然の事ながらスワンズファンからも怒りの声が相次いでいた。「強すぎておもんない」「若手が育たん」「大雑把過ぎる」という至極もっともなご意見多数。負けている時には弱い弱いと文句を言うくせに勝ち続けても不満を叩きつけてくる野球ファンの業の深さには辟易ものだが、実際問題野球というスポーツの根底が覆っている状況は確かであった。またスワンズへの影響も著しく、優勝の度に選手の年棒が跳ね上がり球団経営を逼迫。当然周防に関しては相応の金額を用意しなければならず、優勝の数だけ赤字を計上していた。方々から「はよメジャー行け」との大合唱を浴びせられるも当の本人は「生涯スワンズ」との宣言をしておりその気なし。球団社長どころか親会社の社長までもが直接頭を下げたのにもかかわらず「海外怖いんで」の一言によって一蹴され渡米の希望は絶たれたのであった。

 一人の超人によって瓦解したプロ野球。このままでは野球というスポーツそのものが潰えてしまう。そんな空気感の中、とある球団がタブーを犯した。その球団は民間の科学研究企業が親会社である大阪アミノバイターズである。バイターズは、企業にて量産されたクローン周防9人をスタメンに据えシーズンに挑むという暴挙にでたのだった。


 こうさた発表について発言を求められた周防本人は、次のように答える。


「野球はチームスポーツ。自分だけのチームなんて脅威じゃない」


 どの口が言っているのかという話ではあるが、この時ばかりは全ての野球ファンが周防の言葉に感極まった。そう、野球とは投手、捕手、一塁手、二塁手、三塁手、遊撃手、左翼手、中堅守、右翼種の9人で行うスポーツなのだ。バランスを欠いたチームに負けてなるものかと、周防を含めたの全野球人の闘志が燃え、シーズンに挑んだ。

 が、そのシーズン、日本一にはバイターズが輝いたうえに、翌年から他球団に向けてクローン周防の販売が行われ始めた(単年契約9000万円)。実はこのクローン企画、株式会社アミノ研究所のマーケティングだったのである。古来より日本人は野球に関しては何故か寛大な心を持って接するところがある。倫理的タブーとされているクローン技術を使った商売をするために、アミノは野球を利用したのだ。


 こうしてプロ野球は一人の選手とそのクローンにより個の能力に依存しない完全なる戦略ゲームに変質していき、そして衰退していった。勝つために行った施策が批判され否定されたのだ。

 勝っても負けても、なにをやっても満足しない野球ファンの欲望は底なしである。グローバルスタンダードに倣い、サッカーに移行する時期がもう来ているのかもしれない。

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