ア・テンポ・ブルーム

鹿衣 縒

ア・テンポ・ブルーム

てんとう虫が膝小僧にとまって、永遠と間違えたくなる夕暮れ


ピクミンのアンブレラ・マーカー(喫茶店の水たまりに弾むようなテンポで)


雷を目指して歩く歩道橋 絆創膏のさかいめが痒い


「筆洗を思い出すからミルクを注ぐのが下手です」という看板


くらがりに影がひとり   くるりと回ってくるがり、り


結晶〈ベランダでさえずっている雀〉または収束していく音符


消火栓、きみはきっと忘れられないね 雲の狭間をなぞって歩く


花びらに縫いとめられてわたしたちの、再演 - あるいは、幕間


散ることも咲くことも等しく愛で、わたしは永遠じゃなかったこと


青空を包むのはもういいよ   優しさだけ愛した花束を頂戴

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ア・テンポ・ブルーム 鹿衣 縒 @y_csk_

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