交換

    運命とは予想しがたいものです。


          *


【人間】

暗い夜空に光のしずくが一滴流れた。


「あっ!今見えた!」


僕らに話す暇も与えずに一滴の流れはやがて増え、暗かった夜空を次々に照らした。


キラッ


キラッ


「綺麗ね。」


「そうだな。」


大介たち四人も夢中になっているようだ。僕は心に沈んでいる悩みが、ひとつずつほどけていくような気がしていた。


そうだ。願い事。


【鴨】

キラッ


ひとつが暗い空間を流れていった。次第に天を裂く閃光が立て続けに現れ、夜の静けさを支配していく。そのさまは実に美しい。


「綺麗だ。」


私は我を忘れていた。円型の建物に気がつくまでは。スクリーンに紅色たちが映し出されている。


「またか..」


私は思った。再びあのくだらない争い事が始まろうとしているのだと。


【人間】

僕は息を吸った。


【鴨】

私は無意識に舌を動かしていた。


【人間】

「鴨になりたい」


【鴨】

「一度人間にでもなって奴らの気持ちを理解してみたいものだな。」

         

          *

         

 たとえそれが星の灯す夜空の下であっても


          *


         キラッ


【人間】

「うっ、うわっ、あぁっ!◼️◼️っ!あ◼️、い◼️◼️!◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️」


【鴨】

「な、なんだ!この、感◼️!くっ、ク◼️ッ!◼️◼️◼️、◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️」


【両者】

それは不思議な感覚だった。曖昧だけど/だが、まるで、誰かと意識がような。

         

          *


【人間?】

気がつくと、私は芝の上に横たわっているようだった。誰かが私に声を掛けているのがわかった。


「なっ、なんなんだ。何が起こったというのだ。」


「大丈夫か!?フレッド!」


「どうしたのよ!?急に倒れて!」


どういうことだ。理解が追いつかない。私は周辺を見回した。


「なぜ沼ではないのだ?それになぜ人間が近くにいる?」


翼が触れ合うのを感じた。翼?なのか?ちがう、ちがう!手だ!これは、人間の!何ということだ!まさか、本当に!?


「信じられない...」


私は入れ替わってしまった。おそらく人間と。


【鴨?】

意識が戻ったとき、僕はなにやら見晴らしのいい場所に一人取り残されていた。


「何が起きたんだ?急に体が..おかしくなったみたいだ。」


僕は今の状況を整理しようと必死になっていた。


「何で沼があるんだ?僕は芝の上にいたはず..」


顔を上げると、薄い黄色の何かが目線の先にあった。というより、自分に付いている?


「な、なんだよこれ!?」


それは鴨の嘴だった。どこからどう見ても。頬をつねって見ようとしたけど、手?ではないな。翼がそれを可能にはしてくれなかった。


自分は入れ替わっていたんだ、鴨と...こんなことが起きるなんて。


「信じられない...」


          *


両者の視線の先には、いまだに降り続く流星群の姿があった。


     もう一度説明しましょう。


これは、とある人間?と鴨?のおはなしです。


          


       第一章 『交換』 

         

         ー完ー







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鴨が、ないていた 草薙クリス @breadsoup

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