第3話 花もぐらの子トトとやまのおんせん

〜花もぐらの子トトとやまのおんせん〜



花もぐらの子トトは、お母さんといっしょに

山の上で星座みたいなリンドウを眺めたあと、

ゆっくり山道をくだってきました。


すると、道のかたわらに、小さな水たまりのような池がありました。

「わぁ、なんだろう? 湯気がたってる!」

ふんわりと硫黄のにおいがただよってきます。


「ママ、これ温泉だね」

トトは目を輝かせました。


ママがにっこりうなずくと、トトはもう待ちきれずに、ドボン!

水たまりのような小さな温泉に飛び込みました。


「はぁ~、いい湯加減!」


お日さまが空からにこにこと笑って見ています。

まるで、日光浴と温泉浴をいっぺんに楽しんでいるみたい。


ママは四角にたたんだ白い手拭いを、トトの頭の上にちょこんとのせてくれました。


「あはは、まるで温泉名人だね」

トトはふーっと息をはいて、とろけるような気持ち。


やがてホカホカになった体をタオルでふいて、元気に歩きだしました。




岩の上に腰をおろして、ランチボックスを開けると――


「じゃーん! アップルパイだ!」

ママとトトは、サクサクのアップルパイをほおばりました。


水筒にはあまい紅茶。

ひと口のむと、心までポカポカになりました。




「ふぅ…しあわせ」



トトはおなかもこころもいっぱいになって

、秋の風にほほをなでられながら、また新しい道へと歩きだしました。








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