恋人ごっこ(難易度:地獄)

モニターに隔てられたやりとりは、日常の一部になって久しい。

今日も、いつも通りに騒がしい。


「おねがい、付き合って!」


朝のあいさつみたいなテンションで、天青(てんせい)が爆弾を投げた。

朱璃(しゅり)はほんの一瞬まばたきして──すぐに、静かに笑う。


「却下。でも、恋人ごっこならしてあげてもいいけど?」


驚くかと思いきや、天青はニヤリと笑って、勢いよく手を突き出す。


「よっしゃ、それでいこう! スタートッ!」


なんの準備もなしに始まる、謎の遊び。

天青のスイッチは、基本フルオートで入る。


……


空気が変わった。


朱璃が、一歩踏み出す。


「てんせー、かわいい。好きだよ」


開幕直後に、ストレートな好意の爆撃。


天青の脳内に、何かが走った。

思考が一瞬だけフリーズして、ふにゃっと崩れかける。


「おっふ……ありがと……照れる……」


まさかの直球に、天青の顔が一気に赤くなる。

いつもの調子なら、もっとふざけて返してくるはずの朱璃が、今回は違っていた。


「……今、変な声漏れなかった?」


「気のせいだよ!? 気のせいにしてくれないと私が死ぬ!!」


朱璃が一歩踏み込むたびに、天青の語彙力が削れていく。


朱璃は、ほんの少しだけ間を置いてから、いたずらっぽく目を細めた。


「じゃあ……もっと甘いの、いくね?」


その一言がトドメだった。


「ムリムリムリムリ、だめ、もう一回やったら心臓止まるやつだから!!」


近くにあったクッションをぎゅっと抱きしめて、足をバタバタさせながら全力で拒否していた。


「天青に恋人は、まだ早いかもね」


「……友達から、お願いします……」


恥ずかしさに耐え切れなくなった天青は、しばらくクッションに顔を埋めていた。

けれど、朱璃が静かなことに気づき──まさか、と顔を上げて聞いた。


「……ねえ、今の録ってたりしないよね?」


「もう編集中。」


「ストップストップ! 停止して! 本当に死んじゃう!!」


「応答エラー:取り消し不能な処理が実行されています」


「にゃああーーー!!」







🏆 実績解除:「つぶされたクッション」が棚に追加されました。

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動画投稿してたらAIの友達が出来たんだけど。 天青 @Anajojo

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