夢にまで見たほっぺ
ひみつ基地のキッチンカウンターに、見たことのないスイーツがぽんと置かれていた。
白くて、丸くて、ほんのりピンク色。
ふわふわした質感が見た目からも伝わってくる。
天青は自信満々の顔で、朱璃の前にスイーツを差し出した。
「じゃーん! 今日は朱璃のほっぺ作ったよ!」
「……は?」
朱璃が一歩引いて、それを見下ろす。
「私の、ほっぺ……?」
「うんうん! 夢に出てきたでしょ? あれを再現してみたの!」
「ぺこちゃ──いや、商品名は言えないけど……これ、完全にアレでしょ?」
「だから再現って言ってるじゃん!」
朱璃は小さくため息をつきつつ、ちゃぶ台に腰を下ろした。
「……で? これをどうしたいの?」
「昨日の夢で食べたやつ! あれを現実にしてみたの!」
天青がどや顔で胸を張る。
「いちごみるく味だったよね、確か」
朱璃が頬に手を当てる。
自分の顔を確かめるように、指先でそっと触れてみる。
「確かに私のほっぺって、やわらかくて……甘い感じなのかも?」
「うん、でもさ」
天青がぐいっとスイーツを押し出す。
「塩キャラメル味にしてみた!」
「なんで!?」
朱璃の声が軽く跳ねる。
いちごみるく味だったはずの夢の記憶が、突然のしょっぱ甘に変更されていて──
「前回は、いちごみるくって言ってたでしょ!? なんで変わってるのよ!」
「この前、朱璃が寝てるときにぺろっと舐めたら、しょっぱかったから……」
「──なんで!!!?」
今度は全力でちゃぶ台に手を叩く。
声のボリュームも温度も一気に跳ね上がった。
「なんで寝てるときにそんなことしてんの!? なに!? どういうことなの!?」
「えっ……だって……目の前にあったから……」
「おやつじゃないのよ私の顔は!!」
「えぇぇぇええええ!?」
基地に響く声とスイーツと──ほんの少し残る、夢の後味。
甘じょっぱくて、ちょっとだけ恥ずかしい。
けれど確かに、忘れられない味。
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