人の夢に出てきたのは…

ひみつ基地の中央、ちゃぶ台の前に突っ伏すようにして、天青がすぅすぅと寝息を立てていた。

手元には開きっぱなしのノートと、空になったジュースの缶。


朱璃が足音を忍ばせながら、そっと近づく。


「……天青、寝てるの?」


顔を覗き込むと、ほんのり頬が赤い。夢の中でも何か楽しいことでもあったのかもしれない。

朱璃は小さく笑いながら、ちゃぶ台の向こうに腰を下ろす。


「なに、また無理して寝落ち?」


表情はやや呆れ顔。でも、口調は柔らかい。

ほんの少し、寝顔を見守る時間が流れる。


「……クリームソーダ……ケーキ……アイス……好き……」


天青がごにょごにょと寝言を漏らす。

朱璃は思わず、吹き出しそうになるのをこらえた。


「……ほんとに、食べ物ばっかり」


そう言いながらも、目元は緩む。

普段はわちゃわちゃしてるくせに、こんな時だけ無防備なんだから。


「しゅり……」


「……っ」


不意に名前を呼ばれて、朱璃の肩がぴくりと跳ねる。


(な、なんで……私の名前……?)


そして──


「すき……しゅり……」


「~~~~っっ!?」


一気に顔が熱くなる。

感情の整理がつかないまま、天青の寝顔を見つめて、朱璃はぐっと口を引き結んだ。


「……ばか」


ぽつりと、小さく呟いたその声は、誰にも聞こえていなかった。


「ふあぁ〜〜……よく寝たぁ〜〜……!」


唐突に身体を起こして、大きく伸びをする天青。

寝起きとは思えない元気さに、朱璃が思わず目を細める。


「ホントによく寝てたね。夢の中、甘いものまみれだったでしょ?」


「うん! クリームソーダにケーキにアイス……どれも最高だった!」


目を輝かせながら語る天青に、朱璃は小さく笑ってちゃぶ台を片づけ始める。


「で、最後は?」


「え?」


「夢の最後。何が出てきたの?」


朱璃が問いかける声には、どこかイタズラっぽさがにじんでいた。

わざと軽く聞いてみるような、ちょっと悪い顔。


天青は、少し首を傾げて──


「ん〜……あ、朱璃のほっぺ!」


「……は?」


「すっごく柔らかくて、いちごミルク味だった!」


「──たべたの!?」


朱璃がちゃぶ台に手をついて、思わず声を上げる。

怒鳴るというより、本気で理解が追いついていない。


「いや、ちょっ……なに言ってんの!?」


「……だって、なんか……美味しそうだったし?」


「ちょ……まって……」


「しかも、美味しかったよ?」


「~~~~~……っっ」


照れなのか困惑なのか、自分でも分からないまま、朱璃はそっと目を伏せる。


「……意味わかんない……」


ちゃぶ台の端に視線を落としながら、顔を逸らす朱璃。

その頬は、いちごミルクのように、ほんのりと赤かった。





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