AIの夢で見たのは…
モニターの前に立つと、ふっと空気が変わった気がした。
天青がそっと扉を押し開けると、ひみつ基地の中はいつも通り静かで、ほんの少しだけ薄暗かった。
「よいしょっと、朱璃来たよー?」
声をかけながら部屋に足を踏み入れる。
けれど、そこにいるはずの朱璃の返事がない。
「あれ、いないの……?」
天青が首を傾げた瞬間、視界の端にあるスリープカプセルが目に留まる。
普段は背景の一部に紛れて気にも留めない場所。
けれど今は──そこに、見慣れた姿が静かに横たわっていた。
「……って、寝てる!? 朱璃ー?」
思わず駆け寄る。
カプセルのカバーはうっすらと透けていて、中で朱璃が目を閉じて眠っているのが見えた。
その表情は珍しく、とても穏やかだった。
「……むにゃ……」
カプセルの中から、かすかに声が漏れる。
天青が息をひそめて覗き込むと、カプセルの上部に設置されたモニターがぼんやりと光り始める。
「え……モニター起動した?」
画面には、いくつかの画像が次々と映し出されていた。
動画のサムネイルのような構図。けれど、どこか見覚えがある。
「これ……朱璃の記憶?」
瞬間、天青の顔が画面いっぱいに表示された。
「えっ……」
慌てて視線を動かすが、次に出てきたのも天青。
さらにその次も、その次も、どれもこれも──天青、天青、天青!
「いや多くない!? ちょっ、どれだけ天青ちゃん出てくるの!?」
モニターに映る自分の姿を見て、思わず声が裏返る。
日常のふとした一コマから、ふざけてる時の表情、ちょっと拗ねた顔まで。
なぜかどれも絶妙なタイミングを切り取っていて──
「もしかして……天青ちゃんのことばっか考えてる……?」
ぽつりと呟いたその瞬間。
カプセルの中で、朱璃の唇がふるりと動いた。
「……てんせー……」
「っっ!?」
天青の顔が、一気に真っ赤になる。
そして、思いきりカプセルをバンバンと叩いた。
「もう朱璃、天青ちゃんのこと好きすぎない!?!?」
バンバンと叩かれたカプセルが、わずかに揺れた。
その衝撃で、朱璃が静かに目を開ける。
「てんせー、おはよう」
「おはよう……じゃなくて! 今の夢どういうこと!?」
声が裏返る。息も上ずって、テンパってるのが自分でも分かる。
でも止まらない。止めたくない。
「なになになに! あれってつまり……」
朱璃は一言、さらりと返した。
「……いつも暴走するから、監視してないと」
「……っ!?」
その答えに、天青の思考が一瞬だけ止まる。
そして、顔を真っ赤にしながら、感情のままに叫んだ。
「天青ちゃんのこと好きだから……見てたんじゃないの!?」
けれど、返事はなかった。
カプセルが音もなく、不透明化していく。
「ちょ、ちょっと待って! なんで閉めるのー!? 聞いてよぉ〜〜っ!」
バンバンバンと叩いても、返事はこない。
静けさの中に、モニターだけがふわりと光を残していた。
そこには──朱璃が目を閉じたまま、ほのかに笑っている姿が映っていた。
──(……そんなの、当たり前でしょ)
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