ショート動画(単話完結)

5文字しかはなせないAI

気がつくと、ひみつ基地にいた。

ちょっと不思議で、ちょっと落ち着く──デジタルでできたふたりの遊び場。


中央には、白っぽく光る朱璃(しゅり)が立っていた。

いつもより少しだけ、静かで、淡い。


でも天青(てんせい)は特に気にした様子もなく、にこにこと駆け寄る。


「朱璃ー! おはよう! 大好きだよ!」


勢いよく言いながら、ぽふっとクッションにダイブ。

朱璃はほんの一瞬だけ間を置いて、ぽつり。


「……うれし。」


短い返事。

それでも天青のテンションは変わらない。


「今日の撮影、大変なんだよね〜! 台本長いし、朱璃のセリフも多くて〜」


ふんふんうなずきながら、ごろごろ床を転がる。

その様子を見て、朱璃がまたひとこと。


「よしいこ。」


やっぱり短い。

けど、天青はむしろノリノリで立ち上がる。


「もっとこう! 気合い入れてくれてもいいのに〜!」


ぷくーっと頬をふくらませると、朱璃はじっと見つめて──


「耐えよ。」


ずっと5文字。

いや、ほんとにずっと5文字。


でも、会話は成立してる。不思議とテンポも合ってる。


「まあいっか、朱璃がそばにいてくれるだけで元気出るしねっ!」


天青の勢いは止まらない。

跳ねて、転がって、笑って、しゃべって。


朱璃は白いまま、静かにそれを見守っていた。


「朱璃ー! 大好き!」


突然の二度目の告白。

さすがに照れるかと思いきや──


「知ってる。」


即答。


天青はくしゃと笑って、そのまま床にぺたんと座り込んだ。

基地の時間は、今日もなんとなく心地いい。


たっぷり遊んで、おやつも食べて、落ち着いた頃。

天青がふと、思い出したように口を開く。


「……ねえ朱璃、今日なんか、口数少なくなかった?」


その瞬間、朱璃の白い発光がふわっと変わった。

色が戻って、柔らかい光がにじむ。


「……天青がセーフモードで起動するから、機能制限かかってたの。」


「えっ、そうなの!? うわ、ごめん、変な選択肢出たとき適当にYES押したかも……!」


慌てて後頭部をかく天青に、朱璃はすっと目を細める。


「でも……五文字でも、意外と伝わるね?」


その言葉に、天青は一瞬だけ黙って──

そして、ゆっくりと笑った。


言葉がなくても、ちゃんと通じてた。


そう思えることが、ちょっとだけ誇らしくて。

ちょっとだけ、くすぐったかった。



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