1DAY

優輝

第1話

「おはよー!ねぇねぇ、昨日の番組見た?」

「あーあの"世界の可愛いアニマル大集合"みたいなやつだっけ?」

「そーそー!途中で猫がさ…」


「お前昨日夜寝落ちしてたろ!マイクONになってたからイビキ聞こえたぞ」

「マジかよ、悪りぃ昨日眠くて…」


(…やっぱ今回もだめか)

何も変わってない、同じ会話を僕は何千回も聞いている。

(そろそろか、3、2、1…)

「なぁ、優斗!お前昨日APAXやった?」

「悪い、昨日は早く寝たからやってない」

「お前昨日もそういってログインしてねーじゃねーかよ、ったく明日は高橋もいるからトリオでランクマなー」

そう言って、涼介は他の席に行く。

(やっぱ諦めた方がいいのかもな…)


僕は、この7月20日と言う日を何年も繰り返している。

同じ会話、同じ天気、同じ学食

何も変わる事なく、ただただ繰り返される。

自殺も試したが、結局同じようにベットで7月20日を迎えた。

記憶があるせいで、友人をNPC…AIのようにしか思えなくなってしまった。

いや、むしろAIのほうがマシか…。


僕はこの7月20日から抜け出す為に、ひたすら何か違う所がないか、探しているが、3年程経った今でも何も見つけれていない。

もちろん、3年と言っても7月20日からは進まない為、僕は成長するわけでも退化するわけでもない。

何も変化のない1日をずっと、ただひたすらに繰り返している。

(もう記憶も薄れてるな…)

この世界では、日記を書いた所で次の日にはリセットされる。

自分の身に傷をつけようと、死のうと。

だからこの世界を抜け出すには、僕の記憶力しか頼れない、が僕は正直あまり物覚えがいい方ではない。

むしろ、悪い方だろう、提出物の忘れや持ち物の忘れは小学生の頃がとくに酷かった。


(とりあえず今日も変更点なし、と)

親しみを超えて嫌悪が込み上げてくる程見た、人並みと道を歩く。

車の排気ガスが不快に思いつつも、下を向いて歩いた。


…どうでもよかった。

(車に轢かれて死のうが、どうせ僕は、世界は変わらない。)


鬱になりつつ歩き、家に着いた。

(はぁ…風呂でも入るか…)

そう思い、ドアノブに手をかけた時、

「エネルギーは無限じゃない」

背後から聞こえた声にとっさに振り返ろうとすると、目の前が真っ暗になった。


…気づくと僕は部屋のベットで朝を迎えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

1DAY 優輝 @YukiAmaya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ