仲の悪いそらとはれの姉妹の忘れられてしまったからっぽの王国のいたずらっ子、困った子の同盟。

雨世界

第1話 なにしにきたのって、決まってるじゃん。君を助けにきたんだよ。

 仲の悪いそらとはれの姉妹の忘れられてしまったからっぽの王国のいたずらっ子、困った子の同盟。


 なにしにきたのって、決まってるじゃん。君を助けにきたんだよ。


 私が知っていることなんて、この世界のほんの少しの真実だけに過ぎない。世界は真っ暗な闇の中にあって、そのほとんどの姿を私は目にすることができない。

 それは真理であると思う。

 世界には私の知らないことがたくさんあった。


 私はあなたのことが大好きだった。(私は君のことが大嫌いだった)

 私はあなたのことが大嫌いだった。(私は君のことが大好きだった)


 その二つの気持ちはどちらも本当の私の気持ちだった。

 どちらも本当の大切な私の気持ち。

 さて、ここで問題。

 私はどうすればいいだろう?

 猫になった私は、これから猫として生きていくのか? (本物の猫になるのか?)

 それとも人間として生きていくのか? (やっぱり人間に戻るのか?)

 どっちが正解だろう?

 私がそう問いかけると、あなたはいじわるそうな顔でにっこりと笑って、「あなたの人生なんだから、あなたの好きにすればいいよ」と私に言った。

 そんなあなたのすごく楽しそうな笑顔を見て、優しい風の吹いている、月の明るい夜の中で、自分の家の赤い屋根の上にいる猫なった私は、やっぱりあなたのことが嫌いだと思った。


 私がこうして心から笑えるようになったのは、(きっと)全部あなたのおかげだった。


「あの! 誰かいませんか!!」

 そらは大きな声で(口のまわりに両手を広げながら)そう言ってみたのだけど、大きな白い石造りの門の向こう側からはなんの声も聞こえてはこなかった。

「誰かいませんか!! もしもーし!!」

 少し待ってから、もう一度言ってみるけど、やっぱり同じだった。

 ……、誰もいないんだ。まあ、ここは廃墟のみんなに忘れられちゃった古いお城みたいだし、誰かいるほうが変なのかもしれないな。

 腰に両方の手を当てて、背筋を伸ばして、足を少し広げるようにして立ったままで、そらはじっとひびがはいっていて、ところどころが欠けているところがある古い大きな石造りの門をちょっとだけ見上げるようにして、じっとその大きな美しい瞳で、見つめた。

 誰もいない。みんなに忘れられてしまったお城。(とっても美しいお城なのに)

 やっぱりここは『からっぽの王国』なんだ。

 空は真っ青に晴れていて、わたあめみたいな白い雲がところどころに浮かんでいる。とても優しい春の風が吹いていて、そのあったかくて柔らかい風がそらの長くて美しい腰まである黒髪と、不思議な形の白いお花の咲いたようなふわりと膨らんだとっても短い(太ももがほとんど全部見えてしまうくらい)スカートを揺らしている。

 壊れかけている、大きな石造りの白い門には緑色の草花が生い茂っている。その草花は門だけではなくて、お城をぐるりと囲っているところどころが崩れて、なくなってしまっている壁の意味を無くしてしまった古くて長くて大きな壁にまで伸びていて、そのまま緑色の地面にまで届いていた。

 緑色の中には、色とりどりの小さな花が咲いている。

 それは、まるで絵本でも見ているみたいな、とても美しい幻想的な風景だった。

 ここは、まるで天国みたいなところだな、としゃがみ込んで、そんなお花を見ながら、にっこりと笑って、そらは思った。

 遠くには高い白い雪が積もったままの山々があって、白いお城のすぐそばには、とても澄んだ水の大きな鏡みたいな湖があった。

 どこかで小さな鳥の鳴いている声が聞こえた。だけど、小鳥たちの姿は空を見ても、大地を見ても、どこにも見つけられなかった。

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