第3話 思い出の中の同級生
わたしはこの、岬の町で生まれ育った。実家は今住んでいるマンションから徒歩で十分くらいの所にある。ずっとこの街で生活している。
つまり、幼稚園も義務教育時代もずっとここにいたという事。高校と大学は電車でちょっと内陸部にある所へ通っていた。でも、それだって実家から通学していたのだ。わたしは生まれてからこの岬の町に根を張り続けているようなものだ。
今から書くのは、私が中学時代の同級生の思い出にちょっと違和感を覚え続けている話。私の勘違いかもしれないけど、でも少しだけ不思議な話。
中学時代を振り返ると、真っ先に脳裏に浮かぶのはある指環の事だ。銀色の環に、緑色に煌めく
ある日、突然気が付いた。なんであの子は、あんなものを堂々と学校で身に着けていたんだろう。当然、校則違反だったはずだ。しかし、教師たちも、先輩たちも、そして私を含めた同級生たちも、それを咎めるどころか持ち主に質問すらしなかったのだ。そんな高価そうな指環を教室に堂々と持ちこむことを、接する人は自然な事のように過ごしていたのだ。
それに気が付いた時、私の頭は疑問符がいっぱいになった。なぜ、ブラックオパールの持ち込みを、全員が認めていたのだろう。特別な生徒だったのだろうか。わたしは指環の主の顔を思い出そうとした。
大体予想はつくでしょう。そう。思い出せなかった。私が鮮明に指環の持ち主について思い出せるのはブラックオパールを宿した指だけ。その指を頭の中でよく観察してみると、どうも女子生徒だったらしいことは分かる。
でも、誰かは分からない。卒業写真を実家に帰った時に見返しても、あの、青みがかった輝く黒い石の
もう、永遠に分からないんだろうな、と思う。
でも、それが素敵な事だとも思う。
岬の町にて変な出来事雑記・終
岬の町にて変な出来事雑記 肥後妙子 @higotaeko
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