あの夏を閉じこめたくて
伊咲あゆみ
第1話
明けたての朝顔染まる空色に電信柱キジバトが鳴く
乱反射こもる草花匂い立つ校舎への道いつかなる道
雨が降るプールの中に雨はない世界がふたつ分かれたみたい
雨占い祖父は夕暮れ空見上げ私は靴を空に蹴り上げ
椅子の上胡座をかいて座る母 祖母とビールを大人の時間
朗々と祖母の丸い背ひたむきにあの世とこの世つなぐうたごえ
真っ暗な茄子と胡瓜の川流し「こうするんやで」祖母の帰り待つ
持ち手固定あいた手かざし風除けに永遠に夏閉じこめたくて
ひかりばな残してくれず匂いさえ一歩ずつ夜一歩ずつ明日
羽休む夜風せせらぎ去っていくつなぐ手探し秋虫が鳴く
あの夏を閉じこめたくて 伊咲あゆみ @lafwani0
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