驚異のこんにゃくおじさん
アマリエ
第1話 驚異の軟体人間
こんにゃくじいさんはものすごく体が柔らかい驚異の軟体人間でした。 誰も通れないような狭い隙間も楽々と通過するのだ。 ついこのあいだ、小学生が狭い自販機と壁の隙間に500円玉を転がり落として悲しそうにしていたが、こんにゃくおじいさんは持ち前の柔らかい体で狭い隙間に入り込んで拾ってあげたのだ。 また、高層マンションのベランダから落下した子どもを救ったこともある。持ち前の柔らかい体がクッション代わりになって、子どもを無事に受けとめたのだった。
そんなこんにゃくじいさんでしたが、ある日事件が起こります。 道端で産気づいた女性がうずくまって助けを求めていました。 見ると女性は陣痛だけでなく破水までしており、今にも産まれそうでした。 田舎で病院も近くになく、一刻を争うと判断したおじいさんは、 何と自ら女性の膣内にニョロニョロと入っていき、膣道を通って子宮内まで侵入して赤ん坊を抱えて膣口から出てきました。
結果的に、赤ん坊も女性も無事に助かったのですが、事態はこれで済みませんでした。 女性が婦女暴行でおじいさんを警察に訴えたのです。 おじいさんは警察に捕まり、裁判にかけられました。おじいさんの行為が人命救助として認められるかどうかが争点でしたが、女性の助けてという申し出に対するおじいさんの行為への同意が女性の恥ずかしい部分に侵入されることまで想定されていなかったことや、この行為が医師法や助産師法にも抵触するということで有罪となりました。おじいさんは刑務所に収監されました。おじいさんは刑務所の中で自分のやってきたことを悔やみ、そして社会を恨みました。
おじいさんはすっかり人が変わってしまいました。 数年後、刑務所から出所したおじいさんは悪事を働くようになりました。 持ち前の軟体を利用して、宝石店や店舗の通気口から侵入して、宝石や金品を盗むようになりました。こうしたことを繰り返すうちに、おじいさんの仕業だと知られるようになり、警察から容疑をかけられて、指名手配されました。しかし、おじいさんは捕まりませんでした。おじいさんは警察に捕まらないように、小さな隙間に隠れて身を潜めていました。そして、再び同様の手口で何度も盗みを繰り返したのでした。
そんなおじいさんにも転機が訪れました。 近所で大きな火災が起こり、家の中には小さな子ども2人が取り残されていました。 助けようにもすでに火が回っており、助け出せない状況でした。 もう人助けはこりごりだと思っていたおじいさんでしたが、泣き叫ぶ母親の哀れな姿を見て、いたたまれなくなり意を決して救い出します。子どもは無事に母親の元に届けられましたが、おじいさんもひどいやけどを負い、その場で息を引き取りました。
しかし、その後もこんにゃくじいさんの噂は絶えませんでした。 こんな時にあのおじいさんがいてくれたらなと思う人も少なくありませんでした。 また、医学界からも生物内視鏡として難しい病気の治療に役立てられたかもしれないと惜しまれる声が聞かれました。
おしまい。
驚異のこんにゃくおじさん アマリエ @kiyohaha
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