日々/カクヨム短歌賞1首部門 応募作品

冬野 暉

第1話

嬰児の不思議冬には冬の光が降っていると知っている不思議


世間から切り捨てられまいと謳う誰も彼もが孤独な詩人


人間の命の価値を決めるときあなたは顔のない人ごろし


まぶた越しに夏の夕べの光線世界の果ての残り火みたい


強さとは積み木のように崩れゆき終に残る一欠片の僕


子守唄うたうよ君の貝殻のような耳の水底愛沈め


夏という宝物のように麦藁帽抱いて眠る君の旅


我こそは主権者なりとHB穂先の決意ユポ紙に刻む


誰かを嘲笑うことが正義だと勘違いする悪しき心よ


震災後生まれし子らを抱き津波速報蝉しぐれより拾う


抱っこ紐いいわねと笑うひとがおんぶしていた子は火風に消ゆ


ビニールサンダルで跳ねし子の足元少女の我も見た輝き


三つ編みをしましまと言う吾子の髪解くまで無事にとおまじない

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日々/カクヨム短歌賞1首部門 応募作品 冬野 暉 @mizuiromokuba

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