君を壊したのは、僕の愛だった

@swam

第1話 また春がくる

君はもう何処にもいない。


もし、、もしあの日あの場所で、、壊してしまった愛をまた紡ぎ直せるのならば、僕はもう二度とあのような過ちは繰り返さない。

愛を語るに値しないこの口で、みっともなく君を呼ぶのだろう。贖罪として、残りの一生を君に費やすと誓うだろう。



ぁ、、ぁあ

君に、会いたい




〜 〜 〜 〜








春の終わりのいい夕時だ。日が沈みきっていない空に青と橙色が溶け合って、君がかつてキャンバスに描いたカーネーションのように美しい。


仄かな涼しい風が頬に当たる。頬の涙が乾いて、気化熱が心地いい。まだ桜が残り、今の風にまた散ってしまった。


あぁ、本当だったら今年は君とここにいる筈だったのに…君の命は散り、あの時はただ茫然自失で実感が湧かなくて、看取る事ができなかった。


今でも最期の別れを告げに行くことはできずにいる。足がすくんでしまうのだ。力が抜けて崩れ落ちてしまうのだ。息が苦しくなって自分の愚かさに泣けて、罪悪感に鞭打たれる。泣けて泣けて仕方がない


あぁ、彼女が別れを切り出してきた時なんとなく察しはついていたはずなのに…………




君は僕のことをこよなく愛していて、僕もそれ相応に彼女の愛に応えたつもりだった。


僕が他の女に靡くと嫉妬して、ゴミまみれの僕の部屋を入ると途端に叱責して掃除をし始める。嬉しい事があると、一緒に笑って喜んで、悲しいことがあれば共に泣く、、

精神的に弱かったけど、その分他人を気遣えて、こんな僕に無条件で尽くしてくれたんだ。


…本当に非の打ち所がなくて、無垢な人だった。


僕はそんな彼女に惚れ込んだ。それが良くなかった。

僕は彼女を◻︎◻︎◻︎て、◻︎◻︎◻︎させて◻︎り◻︎させた。

その一方で自己研鑽に努めて大学を卒業し、株式で会社を起こして彼女を迎えた、自分でもよくやったと感心する。


そう、愛し合っていた。並々ならない理由がないと別れるなんて発想になるわけないのだ。別れを切り出す筈がない、分かっていたはずだ……分かっていたさ!!!!!そうだ!!その筈なんだ!!


僕は別れの言葉を受け入れてしまった。

彼女は引き留めて欲しかったんだと思う。いやその筈なんだ。抱きしめて"君しかいないんだ。"なんて愛の言葉を囁いて欲しかったはずだ。その筈なんだ


引き留めようという考えは頭の隅にあったがプライドが邪魔した。中途半端に膨らんだ自尊心が、彼女に踏み込むことを拒んだ。

僕は女に振られて尚みっともなく縋りつく姿を君に見せたくなかった。情けないなんて思われたくなかった。他でもない君にそう思われる事が嫌だった。


ははっ…今思えば本当に愚かだ。



君は死んだ。僕の数々の過ちが、君を殺したのだ。

ああ、君のご両親にはこれでもかって言うほど罵られたよ。まぁあんな形の別れ方になってしまったわけだし、葬式に顔も出さずに君と同棲していた家に引きこもったんだ。仕方ないね。

それに君は一人っ子でお嬢様気質の彼らの愛娘だ。

ご両親もさぞかし無念だったことだろう。



まぁ自分語りはこのぐらいにして


ここからは僕が犯した罪について語っていこうとおもう。あぁ、それとこれは遺書のようなものだから、これを読んで僕を刑に処そうっても無駄。僕は今頃、もう地獄の業火で焼かれてるよ



よし、、前置きはこれくらいで充分かな?



さて、僕はこれを書く為に君の歩んできた軌跡を追ってここまできた。君の日記と照らし合わせて物語り形式で言葉を綴りたいからね。

臨場感を出す為に君の母校からバイト先まで巡ったな。

………

楽しかった

君と関わりのあった人はいなかったけど、しみじみとしたよ。

君がまだこの世界の何処かにいるかのようで。

君を感じているようで。



よし、じゃあ始めよう





(血が滲んでいる。そして何度も消しゴムで消した痕が残っている)


追記

那月、君がもしこれを読む機会があるとしたのなら、君は僕以上の屑で人でなしだ。

死んでしまえ。






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