第十四章 語りの終章、春の余韻。


 その夜、ウチはタグを箱に収めた。


 箱には、春の記憶が詰まってた。


 声の残響、疼きの灯り、語りの断片。


 全部、そこにあった。


 ウチは、そっと呟く……


「ウチの声、これからも誰かに届くやろか。ユイちゃんの声も、レンくんの声も、ミズキちゃんの声も。語りは、誰かの春を灯す。だから、春は、何度でも始まる」


 風が、窓を揺らした。


 その音が、答えてくれた気がした。


 語りは終わらない。


 タグに残された声が、次の語り手を待っているから。



 こだまする声たち。


 そっと、脳内で繰り返し、そして明日へと繋いでゆく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

千春の春は、声の春。……記憶の封印と声の魔法。 大創 淳 @jun-0824

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ