第十三章 語りの余韻、灯りの箱(千春編)


 ウチは、机の上にタグを並べた。


 ユイちゃんの声、レンくんの声、ミズキちゃんの声、そしてウチの声。


 其々が、春の疼きを語ってた。


 タグは、もう光ってへん。でも、音は残ってる。


 語りの断片。変身の証。


 ウチは、それを一つずつ聴いた。


 震える声、途切れた語り、灯りの記憶――全部、ウチの胸に届いた。


「語りは、誰かの声に応えること。その声が、疼きを揺らして、春を呼び戻す。ウチは、それを記録する。未来の語り手のために」


 ウチは、タグの音を文字に起こした。


 語りの断片を、詩のように並べた。


 それは、記録やない。灯りの保存。疼きの継承。


「語りは、魔法やない。でも、ウチらには、それがいちばんの魔法や。だ

から、ウチは記録する。語りの灯りを、未来に渡すために」



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