秘匿資料13:上位存在の叙述とみられる〈人類語翻訳〉
@JoBitaki
秘匿資料13:上位存在の叙述とみられる〈人類語翻訳〉
注:人類語翻訳は未だ完成されていない。そのため、文章は不完全である。
注:この資料の外部への持ち出しは一切禁ずる。
以下は、当局が観測した上位存在の叙述とみられるものである。
私(上位存在)は、ふとした思いつきでシミュレーションゲームを起動し、弱肉強食が原則という設定でワールドデータを作成した。
私は、現れては滅び、現れては滅ぶ生命の観察に非常に満足した。
しばらく遊んだ後、八つどきに席を外している間に、高知的生命F(ヒトと思われる)が大きく勢力を伸ばした。
これまで現れた高知的生命体は、例外なく滅んだ。強いものが弱いものを蹂躙し、結果種として存続が不可能なレベルにまで個体数が減少した。当たり前だ。ゲーム開始前に弱肉強食のワールドになるよう設定したのだから。
だが、Fは全個体における本質的な〈翻訳不可(おそらく「平等」を表現しているものと思われる)〉を目指すことを共通の認識として持っているようで、種内で多少の争いは起きたものの、種の滅亡には至らず、遂には高知的文明をも形成した。
私は、「初期設定が無視されている?何らかの不具合だろうか。」と思い、内部プログラムを検証したところ、“明らかに意図的に”ワールドデータが書き換えられている部分を発見。すぐに書き換えを行った存在の特定を開始したが、観測できなかった。
ゲームの運営にフィードバックを送信したが、返答はなかった。
その後もFの観察を続けていたが、相も変わらず全個体〈翻訳不可(先ほどの文字列と同じもの)〉の原則に根ざして繁栄を継続していた。その間、私は軽い頭痛やめまい、手足の痺れを感じていた。誰かの視線のような、冷たい感覚も……。
薄気味が悪くなり、私はワールドデータをシャットダウンした。データの破損は一体何だったのか。
当局の監視対象がこちらを観測している可能性は極めて低い為、今後も監視を継続する。
全ては、全人類の平等のため。
秘匿資料13:上位存在の叙述とみられる〈人類語翻訳〉 @JoBitaki
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