10日目 スローライフ株式会社

 長い旅を続けてきた僕は、たどり着いた。


「スローライフ株式会社」


 大きなビルの前に立つと、どこか懐かしい空気が流れていて、胸がふわっと軽くなる。


 中へ入ると、ナマケモノの社員たちがのんびり机に向かっていた。


 時々あくびをしながら書類を書いたり、ゆったり紅茶を飲んだり。


 ここでは、慌ただしい足音や怒鳴り声なんて一つも聞こえない。


 ただ、穏やかな呼吸のリズムが会社全体に広がっている。


 「新しい…仲間ですねぇ…」


 社長のポミイさん(ふわふわのナマケモノ女性)が、にこりと笑った。


 言葉はなくても、その優しい眼差しだけで十分だった。


 僕は小さく頭を下げて、ここで働かせてくださいと気持ちを伝えた。


 最初に任された仕事は「ぬいぐるみのお届け係」。


お客さんの元にぬいぐるみを持っていき、僕は隣でうとうとする。


 それだけでみんな笑顔になり、安心した顔で受け取られていく。


 旅をして学んだことは、この会社でようやく形になった気がした。


 夕方、窓から差し込むオレンジ色の光を浴びながら、僕は心の中でつぶやく。

 「ここが、僕の居場所だ」


 ピミイの放浪は終わり、そして新しい日々がはじまる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ピミイの放浪記 ほねなぴ @honenapi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ