軽佻の歌

椿生宗大

surface

薄っぺらい思考を何度もなぞる

他人の真似で読んだ本の中に

心に留まった風に思えた言葉も

今はきっと排泄されてしまった

無邪気な体と誰もが疑わなかった時代も終わり

風を読む姿は大人びているのではなく

戦いから退いた結果である

薄っぺらい思考をなぞる

逃げる中で文に起こす

先人に学び工夫を凝らした偉人たちの真似事

過去の記録を振り返れば

自身の癖を見つけては

粛々と正していけると信じた

ただの文字になれば塵になる

梁の上に溜まる頃には

歌にもならず僕の身体を蝕む黴を呼ぶだろう

思考をなぞる

薄っぺらい 薄っぺらい

薄氷のように透明で

他人の言葉に障れば音が砕けて

霞むような貧弱な思考を

いつからか大事にしている

細い腕で力ない字を紡ぐ

軽佻な男の浮かばれない歌

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軽佻の歌 椿生宗大 @sotaAKITA1014

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